【公式】松本忠之「中国人は反日なのか」(コモンズ出版)著者のブログ

中国が発信している情報を偏見なく紹介します。その他、趣味のサッカー(ガンバ大阪/清水エスパルス/バルセロナ)やお酒の話題など。

ネジ曲げられた中国代表ストライカーの真意

サッカーコラムニスト松本忠之が「まるでコネクティッドカー」と表現した天才フットボーラー中村祐人

問題は中国代表がモルディブ代表との試合を行う瀋陽市の五輪スタジアムで起こった。

広州恒大のFWで中国代表のワントップとしてレギュラーを張る郜林(ガオリン)。実は世界各地で代表戦が始まる前のリーグ戦で広州恒大はアウェイの遼寧戦(瀋陽市がホームタウン)に臨んでいた。事件はその時に起こった。なんとしてもホームで広州恒大に勝ちたい遼寧は、なんと郜林の妻を侮辱する横断幕をホームスタジアムに掲げたのだ。さすがにこれには郜林も激怒。メディアが取り上げたことでサッカー界に一気に広がった。

さすがに騒ぎがここまで大きくなって、遼寧のサポーターも改心したのか、中国代表が地元である遼寧省瀋陽市のスタジアムで次節モルディブ戦を戦うために瀋陽市入りしたのを機に、面と向かって郜林に謝罪しようと考えた。中国代表の練習時間を調べてスタジアムに足を運び、スタンドからピッチ内の郜林に謝罪するというプランを立てたが、如何せん、セキュリティはそれほど甘くない。考えた当該遼寧サポーター(侮辱横断幕を掲げた張本人)は遼寧番記者に橋渡しを依頼した。記者ならメディアパスを取って選手に近づくことができるからだ。記者はこの申し出を快諾した。

そしていざ、中国代表が練習のためにスタジアムへ訪れたタイミングで、依頼された記者が郜林に接触。この件を伝えると、郜林は「謝罪なんて必要ないよ。これから練習だから」と素っ気なく答えた。素っ気なかったが、郜林は決して記者を邪険に扱ったのではなく、あくまでこれから練習だから、そちらに集中させてくれ、というニュアンスだった。

だが…

不幸なことに、そこには他の記者も大勢いた。まさに今、一番盛り上がっているホットな話題が、目の前で新展開を迎えていたのだ。しかも、当該サポーターの謝罪要請を郜林が断るという構図。記者は全員が善人ではなく、注目を集めるためには誇張や「盛る」ことに躊躇しない者もいる。そんな記者によってネットニュースでは「郜林、怒り収まらず」「郜林、遼寧サポーターの謝罪を断固拒否」といった文字が並び、ひいては「郜林、遼寧サポーターの謝罪要請に対して、何をいまさら!そんなもん、要るか!」と如何にも郜林が邪険にサポーターを扱ったかのように書かれた。これに対して郜林は自分と親しい広州恒大番記者を通じて、そんな言い方をした事実はなく、あくまでこれから練習だからとその話を丁重にお断りした、といった意味の内容を表明した。

この件について、侮辱を受けた張本人の郜林の妻も自身のウェイボー(中国版ツイッター)で「もう過ぎたこと。みんなで一緒に中国代表を応援しよう」と発言しており、火種は消えたはずだった。それが、なんの縁か、たまたま代表戦が遼寧の地元で開催されることから、また新たな火種が起こってしまった形だ。

ともあれ、郜林にはとにかく集中を切らさず、しっかりモルディブ戦でゴールを決めて中国代表を勝利に導いてほしい。