【公式】松本忠之「中国人は反日なのか」(コモンズ出版)著者のブログ

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中国女子代表目線のなでしこ観戦記

サッカーコラムニスト松本忠之が中村祐人の「衝撃」を振り返る

日本女子代表リオ五輪で見られないとなれば、それはそれで寂しい。同じアジアの国で、もっとも五輪金メダルに近い国なのだから。

試合は序盤、日本にミスが目立った。私は苛ついていた。中国女子代表にである。相手がこんなにミスをしてくれているのに、決定的シーンすら作れない。今、得点を奪わずして、いつ奪うのか。何か、日本から早々とゴールを奪うことをためらっているかのようにすら、私には感じられた。

それでも、やはり相手の決定的なミスで先制ゴールを奪った。前半14分。ゴールを決めた張睿は非常に落ち着いて、相手GKの脇の下を狙った。1-0。

前半を一点リードして終えた中国代表だったが、非常に気になったのが相手の右MF中島だ。前半、日本の中で唯一、脅威の対象だった。ハードワークし、球際は激しく、気持ちのこもったプレーを見せていた。それでいながら、柔らかいタッチから繰り出されるパスは中国DFの裏を付き、中国サポーターを慌てさせた。これが後半も続くようだと、同点に追いつかれるのは時間の問題と思われた。

それだけに、後半13分の古雅沙のゴールは、シュートそのものも非常にうつくしかったが、それ以上に理想的な展開を作り出した。先に日本にゴールが生まれては、たとえスコアが1-1でも流れがまったく異なる。しかもここは日本。ホームの大声援に後押しされた日本が逆転ゴールを奪うシナリオがスタジアムを支配する。

しかし、ここで、せっかくいい流れを作ったにもかかわらず、中国は自らその流れを断ち切ってしまう。不用意なミスからの失点。相手のパスを自陣PA内でトラップしたが、中途半端なトラップは相手に奪われ、そのままゴールを許した。こういう未熟さが、世界を目指す上でネックになる。リオ五輪でメダルを獲得しようと思うなら、犯してはいけないミスだった。

一点差に追いついた日本ベンチが動いた。私はこの交代に首をかしげた。あの中島に変えて川澄。中国にとって唯一、脅威となっていた中島を下げたのだ。スピードのある川澄で突破口を開こうという意図だろうか。いずれにしろ、中国にとってはありがたい交代だと思った。

案の定、日本は中島を下げたにもかかわらず、攻撃は反対サイドの左から主に展開された。これなら大丈夫、なんとか守り切れる。私は確信した。

とはいえ、その後はよく守った。こういう試合展開ではよくあるパターンとして、一点を追うホームチームが一方的に攻め立て、後方からのロングボールでパワープレーを展開し(まぁ日本はやらないだろうが)、リードを守りたい側は防戦一方。そんな展開がある。しかし、今日の中国はそうはならなかった。押し込まれながらも、しっかりと相手ゴールに迫った。PA外からもどんどんシュートを打った。その姿勢が、最後までDFラインを高く保たたせた。

果たして、試合終了のホイッスル。中国は貴重な勝利を挙げた。それは、3試合目のこの試合で勝ち点を4から7に伸ばしたというだけではない。わずか二枠しかない五輪出場権から、日本という大本命を遠く遠く、遠ざけることにも成功したのだ。それは同時に、中国が五輪出場へぐっと近づいたことも意味する。

さぁ。日本をも破ってストーリーは整った。五輪出場権獲得まで、あと一歩だ。

※当ブログでは、中国1部リーグの呼称を中国で一般的に使われている「中超」に統一いたします。「中超」は中国語の「中国超級聯時」(中国スーパーリーグ)の略で、日本でいうJ1に相当します。また、香港プレミアリーグについては「香港プレミアリーグ」と記します。