【公式】松本忠之「中国人は反日なのか」(コモンズ出版)著者のブログ

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中村祐人&黄大仙観戦記3/5

※当ブログでは、中国1部リーグの呼称を中国で一般的に使われている「中超」に統一いたします。「中超」は中国語の「中国超級聯時」(中国スーパーリーグ)の略で、日本でいうJ1に相当します。また、香港プレミアリーグについては「香港プレミアリーグ」と記します。

次に私が聞いたのはチームについてだ。香港プレミアリーグの中で明らかに戦力的に劣る黄大仙でキャプテンマークを巻き、背番号10を背負いプレーする今季。焦り、イライラ、不満、フラストレーション…いろんな思いがあるのではないかと思ったのだ。

しかし、中村はいつもの飄々とした顔で何事もないように語った。

「そんなにイライラはないですね」

確かにチーム合流直後は、なぜこれができないのか?なぜあそこであんなプレーを?と感じることはあったという。しかし、選手の実力が一朝一夕に変わるわけがないし、チーム力だって移籍市場が閉まった以上は現有戦力で戦うしかない。その根底での覚悟と凡人には測りしれない強大な忍耐力によって、中村はそれらをネガティブな感情にせず、実戦を通して個人としては「自信」を持ち、チームとしては「成熟」させる方向にすでに切り替えていたのだ。

事実、開幕から実戦を重ねるごとにチームの成熟度は増しているという。私が見た限りでも、傑志戦での黄大仙のCB二人は安定感があったし、GKも「いつもの失点パターン」だったという場面で好セーブを見せて無失点に貢献した。

そして、中村は慈愛のこもった指導者のような眼差しでチームの若手についても語った。

「まだまだ自信なさげにプレーしてるんですよね。ボールを受けることすら恐れてしまうことだってある。でもそれは仕方がない。試合を重ねるごとに慣れていくだろうし、若い選手は一度自信をつけたらぐんぐん伸びていくから」

そう。中村は結果が出ない今季のチームのなかにあってネガティブな感情によって自分を見失うことなく、冷静に分析し、好転することを信じて、忍耐強く待っているのである。

サッカーコラムニスト松本忠之が「まるでコネクティッドカー」と表現した天才フットボーラー中村祐人