絶対王者の広州恒大が「らしくない」2連勝
※当ブログでは、中国1部リーグの呼称を中国で一般的に使われている「中超」に統一いたします。「中超」は中国語の「中国超級聯賽」（中国プレミアリーグ）の略で、日本でいうＪ１に相当します。
また、香港プレミアリーグについては「香港超級聯賽」と記します。
リーグ開幕戦を昇格組の石家荘に２１と、先制されて追いつき、後半ロスタイムの逆転ゴールで辛くも勝ち点３を手にした王者広州恒大。そのらしくない戦いは、開幕戦ゆえの硬さからくるものかと思いきや、なんと第2節でも同じく昇格組の重慶に苦戦した。
広州のアウェイとなったこの試合。改善点は先制点を奪ったことだ。昇格組が相手ならば、その戦力と実力差からして「横綱相撲」の試合運びが求められる広州恒大。この日は前半17分にエウケソンのアシストからガオリンが先制すると、前半41分、レネのアシストからグラールが2試合連続となるゴールを決めて、前半のうちに２０とリード。ここまではさすがという戦いだった。ただ、後半は攻めあぐねると63分に1点を返されてしまう。ホームの重慶は王者広州に追いつくチャンスとイケイケムードに。なんとかしのいでしっかり勝ち点３は取ったものの、王者らしからぬ戦いであった。
もちろん、ＡＣＬを見据えてのローテーションでベストメンバーではないという事情もある。また怪我人が相次ぎ、開幕前の想定と陣容が違ってしまっている部分もある。それでも、昇格組には横綱相撲の戦いをしてしかるべきチームだ。この日はキャプテンの鄭智を温存。その影響が出たのか。広州恒大は日本では外国人ストライカーばかりが目立つが、実はチームの支柱、それも試合を作る中心でもあるのは鄭智なのだ。この日は鄭智に代わって黄博文がその位置に入ったが、少なくとも格下相手の試合ならば、黄博文でも鄭智と変わらぬ働きができるようにはなってほしいところ。この日の試合を見る限り、黄博文にそこまで求めるのはまだ難しいようだ。ただ、この試合で黄博文は開始わずか5分で相手選手との接触で流血。包帯を巻いてのプレーだったため、その影響とも考えられる。90分プレーしたことは評価できるが、そのポテンシャルからもっと活躍できる選手だけに、次に期待だ。
それにしても、前述の黄博文に加えて、広州恒大の怪我人事情が深刻だ。
右ＳＢの張琳芃（長友放出でインテルが獲得か？との報道があった選手）は左膝じん帯断裂で5月の復帰予定。
左ＳＢの李学は太ももの怪我で早くても次節の復帰。
ブラジル人ストライカーのアランも開幕前の怪我で復帰は未定。
ＡＣＬウェストシドニー戦で顔面骨折した正ＧＫの曾誠も復帰未定。
李学に代わって左ＳＢを務めている趨正は第2節で左太ももを負傷。幸い重症ではないがＡＣＬの鹿島戦は無理とのこと。
カンナバーロ新体制になっていきなり受難の時期を迎えている広州恒大。それでもリーグでもＡＣＬでも2連勝を飾っているのだから、さすがというべきか。今はまだいいが、今後は選手の疲労も徐々にたまってくる。怪我人が早く復帰して、完璧な陣容でリーグとＡＣＬを戦っていってほしい。
松本忠之（まつもとただゆき）
サッカーコラムニスト。
サッカー専門ブログ「BEE Football Spirit」アドバイザー、コラムニスト。
【略歴】
静岡生まれ。
小さい頃から地元の高校である清水商業（当時）や清水東、東海第一（当時）、静岡学園などの試合を見て育つ。Ｊでは清水サポ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。
【観戦経験】
英プレミア：マンＵ（香川在籍時）、チェルシー、マンチェスターC。
リーガ：バルセロナ
セリエ：ユベントス、ローマ。
ブンデス：ニュルンベルク（長谷部、清武在籍時）、ハンブルガーSV
【中国Ｃリーグ】
中国サッカーへの造詣が深く、山東魯能をはじめ上海申花や武漢卓アルといったクラブ関係者と交流があり、Jリーグのアジア枠設置に伴い、中国人選手がJリーグへ移籍する際の窓口の一つにもなっている。また、元中国サッカー協会会長の閻世鐸氏とは何度も会食している。
０８年 山東魯能のCリーグ優勝祝賀パーティーに日本人として初めて正式招待。
０９年 アジアチャンピオンズリーグ 山東魯能日本人アドバイザー。
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