中超クラブは中国サッカー協会対策で二重帳簿を採用か?
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「イギリス、アメリカ、ドイツ、スペイン。これらのサッカー協会に運営について聞いてみたが、どこもこの種の徴収はないと言っていた」by天津泰達クラブの李広益社長
この種の徴収とは、移籍金の5%を中国サッカー協会(もしくは各地方のサッカー協会)にクラブが支払っているものだ。
たとえば、AクラブがBクラブから王選手を獲得するとする。
王選手とBクラブの契約は満了までまだ2年あるので、この場合、AクラブはBクラブに違約金を支払う。王選手が契約期間内に他クラブへ移籍する場合は、Bクラブに違約金を支払うという契約になっているからだ。これは世界的に一般化しているサッカー選手とクラブ間の契約である。そして、この違約金+選手が移籍するためにいろんな条件がついて支払われるのが「移籍金」である。
王選手を獲得するために、移籍金を支払ったAクラブは、さらにその移籍金の5%を協会に支払うのである。名目は「選手の育成時代から協会が育成に関わったから」。
しかし、多くの中超クラブがこれに反発している。
理由は以下だ。
1、協会が育成に関わったというが、直接的に協会が施設や設備やコーチングを提供して育成した選手はほとんどいない(近年はクラブユースでの育成が多い)
2、冒頭のコメントになるように、世界基準ではこのような徴収はない
3、中超クラブは毎試合に3万元(年間45万元)を試合開催費として協会に支払っている
4、協会は中超クラブから毎年営業収入の10%ほどを徴収している
3,4に関しては「取りすぎだ」ということである。これだけ取っておいて、まだ移籍金の5%を取るとは何事だ!ということだ。
これに対して、中超クラブはどう反抗しているのかが、また面白い。
なんと、帳簿上の移籍金額を少なめに計上しているようなのだ。メディアが予測で報じる移籍金より少ない。しかもメディアが報じる数字の10分の1しかないようだ。
要するに、移籍金の金額が少なくなれば、協会に支払う5%も少ないということだ。
移籍金が1000万元なら5%は50万元。
移籍金が100万円なら5%は5万元。
だったら、帳簿上の移籍金を少なく計上してしまえ、ということだ。
一方のクラブだけでは成立しないが、多くのクラブがこの5%に反対しているとすれば…
中国では一般企業でも帳簿が2冊あるなど、この手の操作はある意味「普通」のことなのである。
ともあれ、真相はわからない。
クラブが移籍金を過少計上しているのかどうか。
協会がこの5%を取ることが正当なのか不当なのか。
いずれにしろ、しっかりとした運営を行って、リーグ全体のレベルアップにつなげてほしい。
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小松英之(こまつひでゆき)
サッカーコラムニスト。
サッカー専門ブログ「BEE Football Spirit」アドバイザー、コラムニスト。
【略歴】
静岡生まれ。
小さい頃から地元の高校である清水商業(当時)や清水東、東海第一(当時)、静岡学園などの試合を見て育つ。Jでは清水サポ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。
【観戦経験】
英プレミア:マンU(香川在籍時)、チェルシー、マンチェスターC。
リーガ:バルセロナ
セリエ:ユベントス、ローマ。
ブンデス:ニュルンベルク(長谷部、清武在籍時)、ハンブルガーSV
【中国Cリーグ】
中国サッカーへの造詣が深く、山東魯能をはじめ上海申花や武漢卓アルといったクラブ関係者と交流があり、Jリーグのアジア枠設置に伴い、中国人選手がJリーグへ移籍する際の窓口の一つにもなっている。また、元中国サッカー協会会長の閻世鐸氏とは何度も会食している。
08年 山東魯能のCリーグ優勝祝賀パーティーに日本人として初めて正式招待。
09年 アジアチャンピオンズリーグ 山東魯能日本人アドバイザー。
※当ブログでは、中国1部リーグの呼称を中国で一般的に使われている「中超」に統一いたします。「中超」は中国語の「中国超級聯賽」の略です。
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