「キングカズ」ではない!?横浜FC観戦記
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※当ブログでは、中国1部リーグの呼称を中国で一般的に使われている「中超」に統一いたします。「中超」は中国語の「中国超級聯賽」の略です。
4月の香港は、もう暑い。
スタジアムにやってくる人たちはみな半そで。サンダルも多い。
「福田っていう選手が香港に来たよ」
大学の後輩からそう教えられた。
「そういえば、最近は香港リーグに日本人選手がけっこう移籍しているな」
そのくらいにしか思っていなかった。事実、香港に限らず、今は東南アジアの国々でプレーする日本人は多い。
だが、まさかその「福田っていう選手」が、かの「福田選手」だったとは、思いもしなかった。そう、何を隠そう、「福田健二」選手だったのだ。
2014年4月19日。
香港モンコック・スタジアム。
17:30キックオフのこの試合に足を運んだ。目的は「横浜FC香港」、そしてもちろん「福田っていう選手」である。キングカズではない。
観戦に備えて横浜FC香港のサイトを調べてみると、あの吉武剛選手もいるではないか。アメリカで山田卓也選手ともプレー経験のある選手である。
そして、試合がはじまると、同行者に教えられた。「あの6番の選手も日本人だよ」。背番号6、井手口正昭選手。名門・東福岡高校出身である。(静岡出身の者としては、東福岡には「勝手に」強烈なライバル意識がある)
横浜FCというクラブだけあって、外国人選手は日本人が主体。日本人と香港人の混成チームという様相だ。この日、対するは太陽ペガサス。今季香港リーグ2位の強豪で、欧米から招いた外国人選手を多数ようする。
試合は02で横浜が負けてしまった。前半に2ゴール決められるものの、後半は巻き返し、惜しいチャンスを幾度も作りながら無得点だった。
そんな中、お目当ての福田健二選手はやはり際立っていた。
技術、フィジカル、ステップ、状況判断。相手が強豪だけに、プレスをかけられるとボールキープが難しいのだが、福田にボールが預けられたときだけは安心して見ていられた。屈強な欧米人選手を相手にもフィジカルでまったく引けを取らない。そして、足元のテクニックでも相手は簡単にはボールを奪えない。ひとり、際立っていた。
前半を02で折り返した横浜は、後半開始から選手を一人入れ替え、さらに福田を二列目の左に配した(前半は2トップの一角だった)。これが奏功した。中盤でしっかりボールをキープできるようになった横浜は、細かいパスと時にサイドチェンジを混ぜ、相手ゴールに迫る。周りがよく見えている井手口がしっかりと中盤の底からビルドアップし、前線で福田がボールに絡むと一気にチャンスが広がる。トップには吉武がいる。ゴールの匂いがぷんぷん漂っていた後半。
それだけに、ポストに嫌われたシーンや、CKからの福田のヘディング含め、ゴールを決められなかったことが何より残念だった。
だが、きらりと光るワールドクラスのプレーもあった。
80分。中盤でしっかりとショートパスをつないだ横浜。PAわずか外の位置でゴールを背にポストプレーに入っていた福田の足元にパスが入る。その瞬間…福田はダイレクトでボールをわずかに浮かせたラストパスをDFラインの裏に供給。飛び込んだ横浜の選手はGKと1対1になるが、シュートはセーブされた。だが、この福田のポストプレー、ダイレクトパス、一瞬にして相手DFを置き去りにし、味方選手をGKとの1対1に持ち込むスーパープレーが生で見られただけでも、十分に価値のある観戦であった。
試合後、選手たちがサポーター席にあいさつにやってきた。
となりで太鼓のリズムに合わせて「ヨコハマFC」と声を張り上げて応援していた地元の人たち。
世界を相手に渡り歩いてきた福田と、日本からやってきたクラブを必死に応援する香港人サポーター。来季はどうなるかわからない(香港リーグは秋春制)が、ぜひとも、来季もここ香港で福田を見たいと切に思った、4月の夕暮れであった。
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筆:小松英之 ツイッターはこちら
小松英之(こまつひでゆき)
サッカーコラムニスト。
サッカー専門ブログ「BEE Football Spirit」アドバイザー、コラムニスト。
【略歴】
静岡生まれ。
小さい頃から地元の高校である清水商業(当時)や清水東、東海第一(当時)、静岡学園などの試合を見て育つ。Jでは清水サポ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。
【観戦経験】
英プレミア:マンU(香川在籍時)、チェルシー、マンチェスターC。
リーガ:バルセロナ
セリエ:ユベントス、ローマ。
ブンデス:ニュルンベルク(長谷部、清武在籍時)、ハンブルガーSV
【中国Cリーグ】
中国サッカーへの造詣が深く、山東魯能をはじめ上海申花や武漢卓アルといったクラブ関係者と交流があり、Jリーグのアジア枠設置に伴い、中国人選手がJリーグへ移籍する際の窓口の一つにもなっている。また、元中国サッカー協会会長の閻世鐸氏とは何度も会食している。
08年 山東魯能のCリーグ優勝祝賀パーティーに日本人として初めて正式招待。
09年 アジアチャンピオンズリーグ 山東魯能日本人アドバイザー。
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