【公式】松本忠之「中国人は反日なのか」(コモンズ出版)著者のブログ

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読者の質問にお答えして…ACLの中国勢を分析

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※当ブログでは、中国1部リーグの呼称を中国で一般的に使われている「中超」に統一いたします。「中超」は中国語の「中国超級聯賽」の略です。

ありがたいことに読者の方からご質問をいただけた。

その質問に答える形で今回は記事を書いていこうと思う。

まず質問は、「ACLは今節中国勢が苦戦した印象があります。(中略)何が原因があるのでしょうか?」

質問の中の(中略)部分には貴州についてのコメントがあった。コメント者もおっしゃるとおり、貴州は現在、中超でも中位に沈んでおり、調子がよくない。先日、この貴州の磊監督のインタビュー特集をTVで見たが、ここ数年、急激に力をつけてきた貴州が、周囲から研究されるようになったと語っていた。だが、成績に関してはもちろん監督である自分に責任がある、とも。なかなか男気のある監督だが、「新興勢力」として見られていたころは勢いもあったし「この成績が実力なのか、たまたまなのか、見てみよう」という周囲の目線があったことは確かだ。それが、リーグで上位成績を残し始めたことにより、すでに中国の中でも「強豪」の仲間入りを果たしたと見られるようになり、相手チームも研究して対策を打ってきているようだ。それに対応できていないが故の現在の貴州の成績だろう。もっとも、ACLに関しては単純にまだJやKに対抗できるだけの十分な戦力と経験が伴っていないことも否定できない。

さて。

ではACLに参加している中超BIG4の他3チームを見てみよう。

今季のACLで「中国勢苦戦」を印象付けているのは実は広州ではないか。去年があまりに圧倒的だったゆえに、今季はその威力が見られないだけで「苦戦」と見られてしまう向きがある。広州のいるグループGは4チームが勝ち点7で横並びという大混戦。ただし、広州はその中でも優位に立っている。最終節はホームで戦えるし、その試合(vs横浜FM)は引き分けでも決勝トーナメントに進める。横浜サポの方には失礼な言い方になるが、はっきりいって広州がホームで横浜に破れる姿はあまり想像できない。

そんな今季の広州を見ていて目立つのは、やはりコンカの不在だ。コンカ、ムリキ、エウケソン。この外国人トリオが昨シーズンはずば抜けた攻撃力を発揮し、アジアチャンピオンにまで上り詰めた。この中でチームをコントロールしていたのはコンカで、今季はその不在ぶりが如実に現れているように見える。コンカは昨シーズン終了後、古巣のフルミネンセに移籍。広州はイタリア代表経験者で同じ左利きでトップ下のディアマンティを獲得。すごい選手が来たのだが、やはりチームになじむには時間がかかるのだろう。だが、それでも中超でも圧倒的な強さを見せているし、そういう意味でコンカの抜けた穴が小さくないにもかかわらず、その影響を最小限に抑えており、昨季ほどの爆発力は見られないが、それでもハイレベルを保っている、そんな印象だ。

次に山東を見てみよう。

2010年の優勝後、11年、12年と中超での成績が奮わず、ACLに出場できていなかったが、3シーズンぶりにACLの舞台に戻ってきた今季の山東は、ブラジル代表経験者でロシアリーグで得点王にも輝いたことがあるラブがACLに登場し、古豪としての経験とラブの攻撃力という大きな期待を背負って戦いを開始した。アウェイ戦にも関わらず、C大阪から3点を奪って快勝した試合もあるが、私が見るに山東はモチベーション高低の波が大きい。試合を見ていると「これって本当にこの前のチームと同じチームか?」と目を疑いたくなるようなレベルだ。以前のように接触プレーですぐに倒れこんでしまう悪い癖は治っているが、試合展開が難しくなってくる、あるいは序盤がら相手に優先されると、「それでもこの状況を覆して勝つ」というような熱意は感じられず、そのままずるずるといってしまうパターンが多い。

チーム力としては悪くはない。その証拠に、上記のC大阪戦以外にも、アウェイの浦項戦でも2ゴールを奪って同点に持ち込むなど、素晴らしい試合は存在する。だが、ホームで浦項に4失点を許したり、そしてまさか手抜きではないだろうが、タイのブリーラム相手には1敗1分で負け越すなど、むらが多い。これは監督のモチベーション管理というよりは、ピッチ上での選手たちの「自己コントロール」の問題と思われる。ベテランの杜威は2012年から加入した選手でチームの生え抜きではないし、王永珀のような生え抜き選手が多い山東だが、試合中にピッチでチームをコントロールできるかといえばそこまで求めるのはまだ酷か。山東の戦力が悪くないにもかかわらず、結果が伴ってきていないのはこのあたりに原因があるように思う。

そして北京だ。

リーグ優勝の数こそ多くないが、2008年から今季まで、ACLに出場しなかったのはわずか1シーズンだけという近年急速に力をつけ、いまや中超の名門クラブとなっている。ここ数年は欧州から監督を招聘し続けており、組織的なサッカーを強化させている。

別にかばうわけではないが、北京は今季、くじ運が悪かったような気がする。もちろん、どの対戦相手とあたっても結果を残すのがプロクラブの務めであることは大前提として、特にJとKの壁が高い中国にとって、この二ヶ国リーグのどのクラブと対戦するかは重要だ。北京のグループFはJ王者の広島とACL常連で経験豊富なFCソウルと一緒になってしまった。Jでいうなら横浜やC大阪のほうがやりやすい。Kに関しては全北や蔚山のほうがやりやすいだろう(全北は今季とても健闘しているが)。JやKにとって、広州や北京よりは、貴州と当たるほうがくじ運がいいように、中超クラブにとってもそれは存在する。チーム力もあり連続出場を続けているという意味から非常に経験もある北京が苦戦を強いられているのは、同グループのJとKが共に「曲者」ぞろいで、そこに手を焼いているように見える。

いずれにしろ、中超BIG4では広州がずば抜けており、それを北京と山東が追い、新興勢力として貴州がいる、そんな構図になっている。ACLで十分な結果を残せるだけの計算ができるクラブは実質上広州だけで、北京と山東に関しては、モチベーションやくじ運で大きく成績が左右されてしまう現状は否定できない。すでに敗退が決まった貴州は残念だが、まだ3チーム残っている。どうか、最終節で奇跡の!?「中超3クラブが決勝トーナメント進出」となってくれれば、中国サッカー界も大いに盛り上がるのだが…

果たして。

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筆:小松英之 ツイッターはこちら

小松英之(こまつひでゆき)

サッカーコラムニスト。

サッカー専門ブログ「BEE Football Spirit」アドバイザー、コラムニスト。

【略歴】

静岡生まれ。

小さい頃から地元の高校である清水商業(当時)や清水東、東海第一(当時)、静岡学園などの試合を見て育つ。Jでは清水サポ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。

【観戦経験】

英プレミア:マンU(香川在籍時)、チェルシーマンチェスターC。

リーガ:バルセロナ

セリエ:ユベントス、ローマ。

ブンデスニュルンベルク(長谷部、清武在籍時)、ハンブルガーSV

欧州CL:バルセロナベンフィカ

【中国Cリーグ】

中国サッカーへの造詣が深く、山東魯能をはじめ上海申花武漢卓アルといったクラブ関係者と交流があり、Jリーグのアジア枠設置に伴い、中国人選手がJリーグへ移籍する際の窓口の一つにもなっている。また、元中国サッカー協会会長の閻世鐸氏とは何度も会食している。

08年 Cリーグ武漢光谷の日系企業スポンサー募集担当。

08年 山東魯能のCリーグ優勝祝賀パーティーに日本人として初めて正式招待。

09年 アジアチャンピオンズリーグ 山東魯能日本人アドバイザー。

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