【公式】松本忠之「中国人は反日なのか」(コモンズ出版)著者のブログ

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柏の大敗は過密日程が原因か?

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ACLベスト4のファーストレグで、柏はホームながら中国の広州に14と大敗した。

昨日の記事にも書いたが、柏はかなり過密日程だ。そのため、リーグ戦の日程変更をJリーグに申し出たが、却下された。もっとも、却下されたのは9月28日に行われる新潟戦(柏のホーム)であるが…それでも、柏が過密日程を経てここまで来ていることには変わりはない。一方の広州はリーグ戦の延期が認められ、準備万端で柏に乗り込んだ。

柏の試合を日ごろまったく見ていない私には、柏の大敗が過密スケジュールによるものかどうか、正直判別できない。ただし、純粋にひとつの試合として見たときには、いくつかのターニングポイントがあった。そのポイント・ポイントでのワンプレーが、流れを大きく変えた。逆にいえば、試合の流れによっては柏にも十分勝機があったように思えた試合だった。

普段から広州の試合を見ている(TVだけでなく、スタジアムでも時々見ている)者からすると、広州はいつも通りのサッカーをしていた。3人の外国人アタッカー+フアン・ボーウェン、チョン・チーによるアタッカー陣の強烈さはアウェイでも健在。そして前線が必ず得点してくれるという確信をもった守備陣は中国クラブによくある過度なファールをほとんど起こすことなく守り抜いた。

ただ、開始10分で先制され、23分のムリキのシュートはバーに嫌われ、前半36分でフアン・ボーウェンが負傷交代したときには、かなり暗雲が立ち込めた。嫌な流れだなと思っていた。

そんな時、この試合一つ目のターニングポイントが訪れる。

前半37分のプレーだ。柏FW田中の決定機を広州GKのゾン・チョンが足で防いだ。これが決まって、20で前半を折り返されていたら、試合結果はかなり異なっていたに違いない。

ただ、それでも広州のいい流れではなかった。後半、早い段階で同点に追いつけないと、アウェイだけに厳しい結果になるだろうと感じた。

この試合二つ目のターニングポイントが訪れたのは後半13分。広州の同点弾だ。

相手のクリアミスから生まれた、広州にとってはラッキーな1点だった。この得点が広州をかなり楽にしてしまった。広州はアウェイだから、この試合は最悪、同点でもいい試合だった。それも、アウェイゴールを奪っての同点ならなおさらいい。後半の早い段階で同点に追い付くことができたことにより、広州はメンタル的に楽になれた。そして自分たちのリズムと流れを引き寄せた。

その象徴となったのが、66分の守備と67分のコンカの2点目だ。

柏のCKから最後は近藤がヘディングシュート。しかし、広州DFがこれをゴールライン上でクリアするナイス守備。すると直後、コンカの能力の高さを証明するような見事なミドルが柏ゴールに突き刺さった。リッピも惜しみないガッツポーズを繰り出すほど、素晴らしいゴールだった。

もうこうなると手がつけられない。69分にはエウケソンがこれ以上ないという見事なフェイントで完璧に近藤を抜き去りシュート。これは外してしまうが、広州の攻撃陣に火がついたのは確実だった。

そしてこの試合の三つ目のターニングポイントは、72分に柏のクレオが放ったミドルシュートの場面だ。広州DFに当たってコースが変わったこのシュートを、広州GKのゾン・チョンがかろうじて触って防いだ。

これが決まってスコアが22になっていれば、試合はまだわからなかった。実際には先ほども述べたように、広州は最悪ドローでもよかった試合だ。しかも22と同点にされても、アウェイゴール2点という絶対的アドバンテージがある。ホームで滅法強い広州はホームゲームに自信を持っている。22でも上出来の結果だ。だが、柏は同点にすることができなかった。ホームだけに勝たなければいけない柏と、最悪同点でもいいが同点のピンチを防いだ広州。このプレーの時点で、両チームのメンタルにはかなりの差があったに違いない。

そして生まれた広州の3点目。

CKからあの形でニアを割られてしまうようでは厳しい。決めたのはエウケソンで、CKを蹴ったのはコンカ。二人ともいいプレーだったが、やはりニアであのゴールを決められてしまっては、勝ち目はないだろう。果たして、後半ロスタイムにもうワンゴールというおまけもついて試合はアウェイの広州が4点を奪って41で勝利というまさかの結果で終了した。

私見ながらこの試合のターニングポイントを三つ挙げて書いてみた。しかしながら、上記はあくまで純粋にこの1試合に限って見た場合の私的な分析であって、Jの日程を肯定できるかといえば、決してそうではない。

栓のないことだが、もしも柏が広州とまったく同じスケジュール条件で戦っていたら…と考えてみる。広州は強い。だが、柏が勝てない相手でもない。実際今日の試合も、スコアほどの実力差は感じなかった。少しのミスが試合を大きく変えてしまっただけだ。それだけに、万全の柏だったら、前半を20で折り返して…とまぁ、これ以上の空想はやめておこう。

ともあれ、まだセカンドレグがある。まずは2試合の結果を見てからだ。

そして、Jリーグはこの現実をどう受け止めるのであろうか。

今回のCリーグとKリーグの対応を見て、自身の対応についても振り返る余地があるだろうか。

本気でアジア制覇を狙うなら、日程調整はやはり必要だ。

筆:小松英之 ツイッターはこちら

小松英之(こまつひでゆき)

サッカーコラムニスト。

サッカー専門ブログ「BEE Football Spirit」アドバイザー、コラムニスト。

【略歴】

静岡生まれ。

小さい頃から地元の高校である清水商業や清水東、東海第一(当時)、静岡学園などの試合を見て育つ。Jでは清水サポ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。

【観戦経験】

英プレミア:マンU(香川移籍後)、チェルシーマンチェスターC。

リーガ:バルセロナ

セリエ:ユベントス、ローマ。

欧州CL:バルセロナベンフィカ

【中国Cリーグ】

中国サッカーへの造詣が深く、山東魯能をはじめ上海申花武漢卓アルといったクラブ関係者と交流があり、Jリーグのアジア枠設置に伴い、中国人選手がJリーグへ移籍する際の窓口の一つにもなっている。また、元中国サッカー協会会長の閻世鋒氏とは何度も会食している。

08年 Cリーグ武漢光谷の日系企業スポンサー募集担当。

08年 山東魯能のCリーグ優勝祝賀パーティーに日本人として初めて正式招待。

09年 アジアチャンピオンズリーグ 山東魯能日本人アドバイザー。

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