ザックジャパンを苦しめたジーコ采配
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小松英之の連載がブログで紹介されました!
日本10イラク
もし、前半の猛攻でイラクが得点を決めていれば、日本は負けていた可能性もあっただろう。イラクが日本を困らせることができた、その戦術は、日本の2ボランチへのマンマークだった。
ジーコ監督は日本戦に臨む前にこう語っている。
「日本には本田と香川という優れた選手がいるが、その後ろにいる長谷部と遠藤に注意しなければならない。彼ら二人がいいボールを前線に送るから、日本の攻撃陣が生きる」(趣旨)
この言葉通り、イラクは遠藤と長谷部にマンマークをつけてきた。本田にもついていた。清武は「全体がほぼマンマークだった」と語ったが、2ボランチと本田へのマンマークが一番厳しかった。
そこで、日本は以下の二つで対応した。
1、2ボランチがマンマークされているため、CBの吉田と伊野波がビルドアップする。その際、中央ではなく少しサイドにずれてビルドアップすることにより、サイドで数的優位を作って攻める
2、本田は前田に「自分はマンマークされている。相手を引き付けてスペースを作るから、そこをどんどん使ってほしい」と語り、前線にスペースを作った
この戦術が功を奏し、前半のイラクの猛攻をしのぐと、日本がペースをつかんだ。そして生まれたゴール。得点シーンは駒野のスローインから岡崎、そして前田へとつながってのゴールだった。リスタートからとはいえ、美しいゴールであった。
試合中に相手の出方によってきちんと修正し、すぐに適応してゴールを奪えるというのはチーム力が高いことを証明している。ましてや、昨日の試合は今野、内田を欠き、さらに栗原がおらず、試合直前で香川まで欠場したのだ。その分を代わって入った選手が見事に埋めた。清武は素晴らしかった。(前半のヘディングシュートは決めてほしかったけど)
試合終了直後、ザック監督が本田を呼びなにやら話していた。
試合終了後の恒例である、監督同士の握手のシーンがない。相手監督がジーコだけに、無意識にそこを注目していたのだが。ザックはずっと本田と話している。
試合後のインタビューで、ザック監督は「ジーコが待っていたとは知らなかった」と語った。しかし、その後、しっかりと握手し、少し会話したそうだ。ちなみに、試合終了直後に本田に何を話していたのか聞かれたザック監督は一言「忘れた」。本当は忘れていないのであろうが、このあたりは非常にメディア対応が上手な監督だ。
本田はザックから常に「点を取れ」と言われているという。
本田自身、「あまりそこまで言ってくれる人がいないからありがたい」と語っていた。この二人の関係は良好なようだ。ザックが常に本田をトップ下で使い続けることも、本田には監督からの信頼の現われとして映っていることだろう。
日本はこの1勝でW杯本大会に大きく近づいた。
ザックは会見で「少しでも早くアジア予選突破を決めたい」と語った。
それはそうだろう。まだ何も決まったわけではないのだ。
油断は禁物。
「大きく近づく」と「W杯出場決定」は雲泥の差だ。
それは、W杯出場が大きく近づいたドーハの悲劇を知る我々としては、痛いほど身にしみて理解しているはずである。
次の試合は11月。
まだまだ気は抜けない。
<筆:小松英之>
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