中村祐人&黄大仙観戦記5/5
※当ブログでは、中国1部リーグの呼称を中国で一般的に使われている「中超」に統一いたします。「中超」は中国語の「中国超級聯時」(中国スーパーリーグ)の略で、日本でいうJ1に相当します。また、香港プレミアリーグについては「香港プレミアリーグ」と記します。
夕食を済ませた我々は場所をコーヒーショップに移した。
話はサッカーだけに留まらず、ビジネスにまで及んだ。私は常々、野球の監督や選手の本にはビジネスに応用しているものが多いにも関わらず、サッカーにはそれが少ないと感じていた。
中村は「確かにそうですね。サッカーとビジネスか。相通ずるものがあってもおかしくないですよね」と言ったあと、意外な一面を覗かせた。
「僕、野球も結構好きなんですよ」
私は自分の知っている知識のなかで探り探り彼の野球知識を測っていたが、すぐにそんな探りはまったく必要ではないことを知らされた。
「大学時代(青山学院大学)に野球部が強かったことで、それまで以上に野球に興味をもった」と語る中村は、球界の最新状況から現役を退いた監督や選手に及ぶまで、縦横無尽に野球を語った。高校野球も好きだという。
私が過去に読んだイチローのインタビュー記事についての話に真剣に耳を傾けたり、野村、星野、落合といった名監督の著作がビジネスの世界に応用されていることも当然のごとく知っていた。
その後、話は人生や生き方にまで及び、私は文字通り「時間を忘れて」会話させてもらった。隣で夫人がフォローを入れてくれることでよりスムーズになったり、時に笑いが生まれたりもした。
幻となってしまったあのゴールが入っていれば、昨季チャンピオンから大金星をあげられていたかもしれなかった試合後のディナー。中村はいつもの屈託のない姿でイタリアンを美味しい、美味しいといいながら平らげ、時にはこちらに料理をよそってくれる気遣いも見せてくれた。
私たちは、すぐの再会を約しあってコーヒーショップをあとにした。まだまだ夜はこらからという様相を呈した香港のセントラルの街中に、中村夫妻の姿は消えていった。
了
サッカーコラムニスト松本忠之が「まるでコネクティッドカー」と表現した天才フットボーラー中村祐人