【中村祐人】独占インタビュー(2015夏) エピローグ香港プレミア15~16開幕
香港プレミアリーグ開幕直前の特別企画として、毎週の土曜日と日曜日に配信してきましたこの連載も今回が最終回。
香港プレミアリーグが今週末から開幕しました。
中村祐人選手の大活躍と黄大仙の好成績を願いつつ、編集後記をお送りします。
松本忠之
編集後記:「中村祐人はコネクティッドカー?」
無数のセンサーを搭載し、常時インターネットに接続して、車と車載機器をつなぐ自動車、「コネクテッドカー」。今後の自動車はこれがスタンダードになっていくことは明白だ。
攻撃陣と守備陣に別れての練習時、攻撃陣のメンバーは固定されておらず、ランダムに組まれるのだが、中村が入った攻撃陣と、中村が入らない攻撃陣とを比較すると、何かが違う。また、同じ選手でも、中村がいるといないとでは、動きが違うように感じる。だが、何が違うのか具体的につかめない。それをつかもうとトレーニングを見続けていた時、ふと浮かんだのがコネクティッドカーだった。
中村のいない攻撃陣は個々が繋がっていないように見える。サッカーだから「連動」というべきだろう。もちろん、中村がいないと連動がなくなるということではない。中村が不在でも連動はしている。だが、中村が入るとその連動はまるで生き物のように息を吹き返す。存在感を増す。実に不思議な光景だった。
私には、まさにコネクティッドカーのように、中村という存在によって、個々がひとつに繋がり合っているように思えた。自動車にはカーナビやオーディオなど様々な車載機器が存在している。そしてそれらが連動していなくても、ひとつの個体として成立している。これが従来の自動車である。そして、それらをインターネットですべてつなげると、従来の自動車からコネクティッドカーにアップグレードされる。つまり、中村が入ることで攻撃陣がアップグレードされる。そんな感覚だ。
常に周囲をしっかり見て、的確な状況判断ができる中村が入ることにより、その影響は攻撃陣だけでなく、当然ながら相手守備陣にも及ぶ。守備陣に変化があれば、攻撃陣もその変化に合わせて変化する。サッカーはゴールを奪うスポーツであり、攻撃陣は常に守備陣の隙を突いてシュートまで持っていくことを狙っており、守備陣はその逆で隙を見せないようにしながら、いかに攻撃陣からボールを奪うかを狙っている。中村がもたらす影響と変化は、彼の絶妙なポジショニングや体の向き、そしてステップから生まれているように思う。その動きに守備陣がつられて対応するとき、守備陣にわずかな隙が生まれ、中村を含む攻撃陣がそこを突く。それは、中村がボールホルダーのときでも、そうでないときでも同じだ。
この中村を中心に据えた攻撃陣がリーグ戦でどれだけゴールを生むことができるのか。非常に楽しみだ。