【公式】松本忠之「中国人は反日なのか」(コモンズ出版)著者のブログ

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【中村祐人】独占インタビュー(2015夏) 第三章戦術

香港プレミアリーグ開幕直前の特別企画として、毎週の土曜日と日曜日に連載を配信いたします。タイトルは「【中村祐人】独占インタビュー(2015夏)」。今年の春にお送りした「【中村祐人】独占インタビュー(2015春)」以来の、香港プレミアリーグで活躍する日本人・中村選手へのインタビューです。

聞き手は中国サッカーに造詣の深い当ブログ執筆者の松本忠之氏。

香港での直撃取材を元に構成しています。ぜひとも最後までお楽しみください!

【中村祐人】独占インタビュー(2015夏) 第三章戦術

—レンタル移籍というと、レンタル期間終了後に所属先に戻る、あるいはレンタル先がその選手を買い取るなど、いろんな形式がありますが、少し話は早いかもしれませんが、今シーズン終了後に関してはどんな状況でしょうか?

中村「まだ何もわかっていないですね。ただ今シーズン中にサウスチャイナに戻ることはないでしょうから、まずはしっかり黄大仙で結果を残してアピールすることだと思います」

—まずはこの一年でしっかりアピールして、その先の展開を待つ、と。

中村「今の僕が置かれている状況が、そういう状況ですからね」

—中村選手本人の意向としては、やはり一年後はサウスチャイナに戻りたいという気持ちがあるのでしょうか?

中村「いや…。違うチームに行ってみたいですね」

—そうですか。

中村「はい。黄大仙で香港リーグ4チーム目ですけど、いろんなチームで経験を積めたらいいなと思っています」

—これは一般論としてですが、強豪チームや名門クラブというのはレギュラー争いも熾烈です。一方、そうでないクラブの場合は、チームとしてのレベルは下がるけども、自分が主力として活躍できる、という部分もあります。客観的に中村選手はどちらのほうがいいですか?

中村「そこは、サラリーにも関係してきますね」

—確かに。

中村「単純に資金力が大きいクラブのほうが選手のサラリーもいい。レギュラー争いが激しいのは、これはプロとしては当然のことです」

—なるほど。つまり、レギュラー争いが激しいのはプロの世界では当然のことなので、その理由によってレベルが低いチームのほうがいいということはないわけですね。

中村「もちろん、強くないチームでも自分のことを高く評価してくれて、それなりのサラリーを出すクラブがあれば、それはそれでやりがいはありますけどね」

—黄大仙のサッカーについて再度、お伺いさせてほしいのですが、実力的に劣るチームが強い相手と対戦するときに、ひたすらゴール前を固めて攻撃はカウンターのみ、みたいなパターンもあります。黄大仙はそういう戦い方は?

中村「しませんね。黄大仙は昨シーズンもプレミアで戦って、実力的には劣っていましたが、そういう戦い方はしていなかったですしね。アグレッシブに前線からプレッシャーをかけたり、奪ったボールは大事にしたり。そういうプレースタイルですね」

—では、中村選手個人としては、ひたすらゴール前を固めてカウンター、みたいな戦い方はどう思いますか?先日のワールドカップ・アジア予選でのシンガポールのような戦い方は…

中村「時にはそういう戦い方が必要なときもあると思います」

※2015年6月に日本のホームで行われたワールドカップ・アジア予選の日本vsシンガポール。戦前から予想されていたとおり、シンガポールは人数をかけてひたすらゴール前を固めるサッカーを展開。ボール支配率は日本66%シンガポール34%。シュート数は日本23本に対してシンガポール3本。にも関わらず、試合は00の引き分け。シンガポールが格上の日本から勝ち点1をもぎ取った。

—中には、そういう戦い方はサッカーではない!みたいな批判もありますが…

中村「それも含めてサッカーでしょ?と。ゴール前固めておけば、どんなに強いチームでも、なかなかゴールを奪うことは難しいですからね」

—以前、インテルモウリーニョ時代に欧州CLを含む3冠を達成したことがありましたが、その時の欧州CL決勝でも、がちがちに守備を固めて戦いました。

中村「確か、ミリートが2ゴール決めたんですよね」

UEFAチャンピオンズリーグ 2009-10 決勝。モウリーニョ率いるインテルは当時ファンハールが率いていたバイエルンと対戦。ボール支配率はインテル34%バイエルン66%で、ファンハール監督が試合後に「インテルはリアクションしかしなかった」と愚痴をこぼした試合は、ミリートの2ゴールでインテルが21でバイエルンを下して欧州王者に輝いた。試合後、インテルの戦い方は受身すぎるという批判が噴出する一方、あれは単なるカウンターサッカーではなく、奪ったボールを素早くゴールに結びつけるモウリーニョの新たな戦術であるとする論調も飛び出し、賛否両論が巻き起こった。

—そうです。あの試合も賛否両論ありまして、結果が出たのだから素晴らしいとする人もいれば、あんなサッカーをするなんてと批判する人もいました。そういう風にサポーターが自由に議論できるということもサッカーの魅力のひとつではあるのですが、やっている選手本人はどんな気持ちなのかな?と。そこでお伺いしたいのは、もしも監督がそういうサッカーを要求してきたとしたら、特にFWである中村選手はどんな風に思うのかな、と。

中村「選手からすると、やはり試合に勝つことが一番楽しいですから。僕は全然問題ないですよ」

—たとえば、90分のうち80分以上は守りっぱなし。でも、試合終盤のワンチャンスでカウンターから決勝ゴールを奪って勝つ、みたいな展開でも…

中村「最高じゃないですか。全然嬉しいですよ。やはり勝つことが一番ですからね」

Image01:黄大仙の練習場のひとつ「Po Kong Village Road Park」 By Tada

Image02:Yuto Nakamura @ Elgin Szechuan Cuisine by Tada