【公式】松本忠之「中国人は反日なのか」(コモンズ出版)著者のブログ

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【中村祐人】独占インタビュー(2015夏) 第二章黄大仙

香港プレミアリーグ開幕直前の特別企画として、毎週の土曜日と日曜日に連載を配信いたします。タイトルは「【中村祐人】独占インタビュー(2015夏)」。今年の春にお送りした「【中村祐人】独占インタビュー(2015春)」以来の、香港プレミアリーグで活躍する日本人・中村選手へのインタビューです。

聞き手は中国サッカーに造詣の深い当ブログ執筆者の松本忠之氏。

香港での直撃取材を元に構成しています。ぜひとも最後までお楽しみください!

【中村祐人】独占インタビュー(2015夏) 第二章黄大仙

—ではここからは黄大仙についてお伺いします。黄大仙の正式名称は「黄大仙区足球隊」。香港の行政区のひとつである「黄大仙区康楽スポーツクラブ」(以下、康楽会と記す)が母体のフットボールクラブです。「康楽会」は香港の行政区のひとつである「大仙区」の総合スポーツクラブで、設立から30年以上の歴史を持ち、サッカークラブは2002年に設立されました。昨季、香港プレミアリーグ昇格一年目を3勝5分8敗という成績で終えて残留を果たし、今季もプレミアのステージで戦います。チームに合流して、選手の実力については率直にどのように感じていますか?

中村「選手個々の実力については、サウスチャイナと比較してしまうと明らかに黄大仙のほうが劣っています。ただ、やってるサッカーは昨季、驚きを持って受け入れられた部分もあります。すごくいいサッカーをしていますね。そして僕にも合うプレースタイルのクラブなので、単純にサッカーをやる楽しさという部分では、やっていてすごく楽しいですね」

—チーム全体の実力としては、香港プレミアリーグでどのくらいの位置にいるのでしょうか?

中村「現実的な目標としては残留ということになるんでしょうけど、昨季もプレミアの舞台でシーズン通してプレーしたクラブですし、サプライズを起こす可能性は秘めていると思っています」

—なるほど。

中村「自分が思っていたよりも、できるなっていう感覚はありますね」

—黄大仙の香港人選手のレベルはどうですか?

中村「香港代表に選ばれるような選手は、僕と一緒にレンタルで来たGKの選手が30人の候補に入ったくらいです。でも、若くてポテンシャルのある選手は何人かいますね。彼らはまだ香港代表には入っていませんが、いずれ入れるのでは?という気がしています」

—もう少し黄大仙に決まるまでの期間についてお伺いしたいのですが、レンタル放出されると聞かされて、所属先が決まるまで、しばらく時間がかかりましたし、やはりその期間というのは悶々としていたのではないですか?

中村「そうですね…。レンタル先が決まるまで、僕はサウスチャイナでトレーニングしていたんですね。まぁ行かなくてもよかったんですが、監督から来てもいいと言われていたし、自分自身もコンディションは整えておきたかったし。」

—そこはもう、割り切って参加していた、と?

中村「そうですね…。まぁ嫌な気持ちもありましたけど。」

—厳しいプロフットボールの世界では、選手のレンタル移籍というのはよくあることではあります。でも、自分自身がその立場になったというのは、どんな心境でしたか?

中村「まぁレンタルという形式が僕は初めてだったので、衝撃はありましたね」

—初めてのレンタル。そしてなかなか移籍先が決まらないという状況。

中村「やはり移籍先が決まらない期間には焦りはありましたね。でも、どうやら黄大仙で決まりそうだぞ、ってなってからは、新たなクラブでの挑戦に向けて気持ちを切り替えられました」

—サウスチャイナのチームメートからは、声をかけられましたか?

中村「はい。サウスチャイナの選手間でWhatsApp(ワッツアップ)のグループチャットを作っていまして。僕がそこにお別れのメッセージのようなものを送ったら、それに返信する形で、いろいろ声をかけてくれましたね。また、個人的にも声をかけてくれた選手はいました」

—声をかけられて、どうでしたか?

中村「チームメートが僕のことを認めてくれているというのが伝わってきて、嬉しかったですね」

          

—黄大仙に話を戻しますが、チームに合流したのはいつからですか?

中村「8月の最初の月曜日からですね」

—第一印象は?

中村「いろいろあって今季のプレミア参戦が決まるまでに時間がかかったからでしょうね、みんな、まだまだ身体が動けてないなっていう感じでしたね」

—そこから約2週間が経ちました。今の印象は?

中村「いい意味で裏切られたという感じですね。本当に能力の高い選手もいますし、若い選手も溌剌としている。それに、(僕に対する)リスペクトもすごく感じるので、一緒にやってて楽しいですよ」

—ご自身の起用法なんかは、なんとなく見えてきていますか?

中村「当初、4141の、前の4の中央でっていう感じだったんですけど、その後、新しく外国人選手がふたり入ってきて、そのうちの一人がパス出せたり、ボール散らせたりできる選手なので、僕自身はワントップに行ったほうがいいな、みたいな話を、ちょうど昨日、監督としたところです」

—まだチームに合流したばかりなのに、もうすでに監督とそういう話までされているんですね?

中村「そうですね。割とそういう面でも期待されているようで。あとは、若い選手にもどんどん声かけてやってくれとか。まだベテラン選手ではないけど、そういう役割も期待されていますね」

—ご自身では答えにくいかもしれませんが、それはやはり、香港サッカー界における中村祐人という選手の実績や知名度、実力があるからこそ、なんでしょうね?

「うん…。まぁ認めてくれているというのはあるんでしょうね。そこは素直に嬉しく思っています」

—チームのフォーメーションはもう4141で決まっているんですか?

中村「ベースはそれでしょうね。その上で442や433に変動したりとか」

—その中で、自分としてはやはり1トップがいいと思っている、と?

中村「自分がやはりトップでプレーしたいというのもありますしね。自分がトップに入ることでポイントにもなれるんで、チームにとってもそのほうがいいと思います」

—黄大仙のサッカーの特徴は?

中村「狭いエリアで連動していくサッカーを目指しています」

—それは香港リーグの主流とは少し異なりますね。こちらでは、トップに身体の大きい選手を置いてロングボールとか…

中村「そうですね。あとは個人能力でワイドに、とか」

—その中で、黄大仙は少し毛色が異なるのですね。

中村「そうです。練習をやってみた感覚としては、ワイドというよりも、コンパクトにまとまって、コンビネーションで攻めていくスタイルを追求していますね」

—もちろん、開幕してみないとわからないことですが、そのスタイルが成熟してきたときには、どれくらいリーグ戦で通用するものなのでしょうか?

中村「(怪我等で)主力が抜けなければ、という前提が入りますが、そこそこいけるんじゃないですかね。その代わり、コンビネーションがすごく大事になるサッカーなので、主力が2,3人抜けてしまうと、ちょっと厳しいかな」

—コンビネーションが大事になるサッカーを目指してはいるものの、中村選手はじめ、数人の外国人選手は今季から黄大仙に加入したばかりで、シーズンを通して連携を深めていく必要があると思うんです。ただ、そうなると、シーズン序盤は連携不足で厳しい戦いを強いられる、なんてことにはならないのでしょうか?

中村「いや。その辺は、監督がそういうサッカーに合っている選手を選んでいるということもあるので、フィットするのは割と早いんじゃないかな」

—コンパクトにまとまってコンビネーションで崩していくサッカー。どちらかというと、バルサのようなスタイルですか?

中村「バルサの場合、コンビネーションはそうですが、前線の選手はワイドに張ってますよね。うちは4141の、前の4枚の両サイドはワイドには開かないです。ワイドに開く展開の時はSBに任せる感じですね。なので、前線の4枚とワントップはコンパクトにまとまって、(ワントップの)僕のところに入ってきたボールに対して、ポジションを自由にチェンジしながら、連動して動く感じです」

—その辺は自由があるんですね。

中村「はい。時には僕が左にいって、左の選手が中に入って、とか。だから、練習からコミュニケーションをしっかり取っていく必要がありますね」

image01:トレーニングに励む黄大仙の選手たち by Tada

Image02:Yuto Nakamura @ Elgin Szechuan Cuisine by Tada