北京国安がホームで浦和に完勝できた理由は何か?
※当ブログでは、中国1部リーグの呼称を中国で一般的に使われている「中超」に統一いたします。「中超」は中国語の「中国超級聯賽」(中国プレミアリーグ)の略で、日本でいうJ1に相当します。
また、香港プレミアリーグについては「香港超級聯賽」と記します。
北京がホームで浦和レッズに快勝。ACL3連勝を飾った。
だが、試合は決して簡単ではなかった。北京の2ゴールはそれぞれ78分にバタラ、84分に于大宝が決めたもの。浦和側のミスによって生まれた得点だが、試合は78分間スコアレスで動いていた。「このままスコアレスドローで終わりか」という空気も漂い始めていたのだ。
それでも、最後にしっかりと勝利した北京はさすがに中超にあって「広州恒大の最大のライバル」と称されるクラブだけはある。同じくACL第3節で山東と広州富力は敗戦。この2チームはグループステージ突破がかなり厳しくなったが、北京は3連勝。今夜行われる広州恒大も現在2連勝中。今年のACLは第3節までで、中超BIG4の明暗がくっきりと別れる結果となっている。
さて。そんな北京のマンサーノ監督の試合後会見の映像を見て思ったことは、このゲームでは北京の「フィジカル」が優れていたということだった。ただ、フィジカルといってもいろいろある。
まずは、フィジカル・コンディション。JもCもリーグ戦が始まっているが、北京国安は開幕戦、第2節とそれぞれ昇格組との対戦となった。これは広州恒大もしかり。つまり、中国サッカー協会はACLで勝ち抜いてもらうために、広州恒大と北京国安にはリーグ開幕戦と第2戦にいわば「強くない」チームを持ってきたのだ。この辺りは中国サッカー協会がACLを非常に重視していることがうかがえる。そして、そのおかげで北京は(広州恒大もだが)リーグ戦第1節と第2節ですでにターンオーバーを使用するなど、選手のコンディションをしっかりと調整できている。これがまずひとつ。
次に、フィジカル・インテンシティーだ。スペイン人のマンサーノ監督がJクラブを分析し、そして自チーム選手の特徴を把握していれば、当然「フィジカルコンタクトで有利に立てる」とわかっているのだろう。試合後の会見でも「ピッチ上で高いレベルのフィジカルを見せることができたね」と満足気に語っていた。これは、狙い通りということだと私は感じた。中国の選手は東アジアの中では優れたフィジカルを持っているし、また中国サッカーもフィジカルを重視する(それゆえ過去には危険なプレーが多く「カンフーサッカー」などと揶揄されたが)。
実は、北京国安はオフシーズン、スペインでキャンプを張っていた。ある北京の記者はそのキャンプの成果が表れていると語る。スペインキャンプでどんなトレーニングを積んできたのかまではわからないが、その成果が出てJの強豪にホームで20と快勝できたというならまさに「マンサーロ効果」だ。
いまや、中国の強豪クラブは「豊富な資金による優秀な外国人ストライカー頼み」のクラブではない。広州恒大がリッピを連れてきたように、監督にもお金をかけれるようになっている。そして、優秀な監督の招聘は戦術やマネージメントだけでなく、今季の北京のように「フィジカル強化」の面でも威力を発揮する。
ACLにおいて、中超クラブは広州恒大だけではない!というところを、北京には見せてほしい。
松本忠之(まつもとただゆき)
サッカーコラムニスト。
サッカー専門ブログ「BEE Football Spirit」アドバイザー、コラムニスト。
【略歴】
静岡生まれ。
小さい頃から地元の高校である清水商業(当時)や清水東、東海第一(当時)、静岡学園などの試合を見て育つ。Jでは清水サポ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。
【観戦経験】
英プレミア:マンU(香川在籍時)、チェルシー、マンチェスターC。
リーガ:バルセロナ
セリエ:ユベントス、ローマ。
ブンデス:ニュルンベルク(長谷部、清武在籍時)、ハンブルガーSV
【中国Cリーグ】
中国サッカーへの造詣が深く、山東魯能をはじめ上海申花や武漢卓アルといったクラブ関係者と交流があり、Jリーグのアジア枠設置に伴い、中国人選手がJリーグへ移籍する際の窓口の一つにもなっている。また、元中国サッカー協会会長の閻世鐸氏とは何度も会食している。
08年 山東魯能のCリーグ優勝祝賀パーティーに日本人として初めて正式招待。
09年 アジアチャンピオンズリーグ 山東魯能日本人アドバイザー。
※当ブログでは、中国1部リーグの呼称を中国で一般的に使われている「中超」に統一いたします。「中超」は中国語の「中国超級聯賽」の略です。
BEE Football Spiritは「上海をサッカーの街にするプロジェクト」をサポートします!