【公式】松本忠之「中国人は反日なのか」(コモンズ出版)著者のブログ

中国が発信している情報を偏見なく紹介します。その他、趣味のサッカー(ガンバ大阪/清水エスパルス/バルセロナ)やお酒の話題など。

海外(中国)から見たアギーレ騒動。任命責任は必要か?

アギーレ監督との契約解除。すでに日本では大手メディアがトップ記事として報道し、サッカー専門メディアでもたくさんの記事やコラムが掲載された。

中国在住10年以上。この国のサッカーを、サッカー協会も含めてつぶさに見てきた者として、率直に感じたことを書いてみたい。

日本サッカーは発展する。それが私の所感だ。理由は単純。協会の「任命責任」を求める声が大きく、また影響力もあるからだ。中国でも、サポーターの協会に対する不信や抗議行動は過去にあったし、何度も見てきた。しかし、そもそも政治体制が異なり、サッカー協会といえども、そのトップは共産党幹部であるこの国では、民の声が官に対して、直接的だろうと間接的だろうと、影響力を及ぼすのは難しい。影響力が大きくなりそうになると、情報操作で抹殺されるからだ。しかし、このアジア杯で中国代表が躍進できた理由の根底には、サッカー協会の内部改革という事実が確実に存在する。やはり、サッカーはただいい選手だけを集めても強くならない。しっかりとオーガナイズされた組織による運営が必要なのだ。ここでいう「しっかり」には既得権益の打破、不正や汚職のないクリーンな、という意味も含まれる。中国サッカー協会のここ何年かの自浄努力は官主導である。民による影響力がきっかけではない。

翻って、日本では今回のアギーレ監督の騒動により、とにかく「任命責任」を問う声が多かったように感じた。そして、あれだけのメディアと民が任命責任を追求すれば、協会もそこをおざなりにするわけにはいかないのではないか。つまり、メディアや世論がサッカー協会を厳しく追求し、それが実質的な影響力を発揮するのだ。もちろん、日本だから政府による情報操作での抹殺などありえない。

日本サッカー協会が今回の件で任命責任を負うべきなのかどうかについては、あくまで個人の意見だが、まぁ海外生活が長い者にとっては「詐欺は騙される方が悪い」が常識だから、アギーレ監督の背景を見抜けず、このタイミングで明るみになってしまったことは、騙されたサッカー協会が悪い。(アギーレ監督が八百長を否定しているので、アギーレ監督は日本サッカー協会を騙したつもりはないだろうが、そこはスペイン当局と裁判所の結果を待つしかない)。だが、極東のサッカー協会が八百長や違法賭博やはてはマフィアとの関係も取りざたされる欧州フットボール界において、どれだけの情報収集能力を備えているのか?と考えると、今回の件はある意味「初犯」なのだから、任命責任もそこまで厳しく追求する必要はあるのか?とも感じる。要するに、感覚としては、日本がまじめ過ぎで、欧州フットボール界のほうが一枚も二枚も上手だから、これをしっかりと教訓として、今後に生かしていこう、とこのくらいでいいのでは?という気持ちもある。それは甘い!という意見はもちろんあるだろうし、スポンサーや関係者など利害関係にある人たちにとっては、そうもいかないのだろうが…だからあくまで個人の感覚である。

ともあれ、メディアや民が協会に対して(少なくとも中国よりは)影響力を発揮できる。これは日本サッカーの発展にとって、とても有利で有意義な環境だ。だから、日本サッカーはまだまだ発展できる。

もっとも、日本サッカーが発展できる環境があっても、だからといってW杯に出場できるかどうかは別問題。まずは今回の騒動の落とし前をどうつけるのか。そして新監督は。この両面から注目していきたい。