奇跡の逆転優勝へ北京のシナリオ完成!リッピはいらいら隠せず
「何も言うことはない。この勝利、この試合の栄光は北京にあったということだ。彼らを祝福するよ」
半ば投げやりに広州の指揮官は言い放った。
この試合を含めて今季残り2試合。両チームの勝ち点差は6。首位の広州は引き分けでも優勝が決まる。この試合をホームで戦ううえに、広州はクラブ史上初の9連勝中と勢いに乗っている。中国サッカー協会は優勝が決まる可能性もあるため、表彰式の準備をスタジアムにおいて進めており、何より詰めかけた3万人以上のサポーターは優勝を信じて疑わなかったに違いない。なにせ広州恒大はこの試合が今季最後のホームゲーム。ここで優勝を逃せば、最終節はアウェイでの戦いになる。なんとしてもこの試合で決めたい。2位の北京をホームで破って優勝。最高の形だ。いや、もうここまで来たら、引き分けでもいい。とにかく、優勝を決められればそれでいい。だが…
広州恒大が後半開始にイエロー2枚で退場者(孫祥)を出し、両軍合わせて8枚のイエローが乱れ飛ぶ荒れた試合は、広州が10人での苦しい戦いを強いられつつも堅い守備で失点を許さず、00のままフィニッシュするかと思われた87分。北京の邵佳一が直接FKを広州ゴールに叩き込み10。リッピが「彼らの唯一の得点方法だった」と試合後に語ったプレーで見事に北京が勝利をおさめた。
これにより、優勝争いは最終節に持ち込まれた。近年の中超史上稀にみる大混戦だ。
ただ、広州有利に変わりはない。
今節を終えての勝ち点は広州69、北京66。次節も広州は引き分け以上で優勝が決まる。一方の北京はまずは勝利が大前提。その上で広州が負けた場合においてのみ、優勝の可能性がある。ただし、それこそが奇跡のシナリオなのである。最終節で広州が負けて北京が勝つと、ともに勝ち点69で並ぶ。その場合、直接対決の結果で優勝が決まるのだが、今季の両チームは北京の1勝1分のため、北京が優勝となる。つまり、今節の北京の勝利は単に勝ち点差において最終節まで可能性を残しただけでなく、直接対決の戦績を優位にさせる結果でもあったのだ。しかも、最終節の組み合わせは圧倒的に北京が有利と来ている。
中超最終節
北京vs河南(北京)
北京はホームで戦えるうえに相手は残留争い組の河南。
一方の広州恒大はアウェイなうえに、相手は今節までACL圏内の3位争いを演じた山東なのである。
今節の勝利で北京の「奇跡の逆転優勝」のシナリオが完成した。
だが、もちろん、広州恒大もそのシナリオをおいそれと許すはずがない。なにせ、引き分けでも優勝なのだ。
試合後の記者会見では「とにかく山東で勝ち点を奪い返すのみ」と何度も繰り返したリッピ監督。
最後も「とにかく山東で勝ち点を奪うよ。OK?finish!」と会見を半ば強引に切り上げるいらいらぶり。
運命の最終節は11月2日だ。
※当ブログでは、中国1部リーグの呼称を中国で一般的に使われている「中超」に統一いたします。「中超」は中国語の「中国超級聯賽」の略です。
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小松英之(こまつひでゆき)
サッカーコラムニスト。
サッカー専門ブログ「BEE Football Spirit」アドバイザー、コラムニスト。
【略歴】
静岡生まれ。
小さい頃から地元の高校である清水商業(当時)や清水東、東海第一(当時)、静岡学園などの試合を見て育つ。Jでは清水サポ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。
【観戦経験】
英プレミア:マンU(香川在籍時)、チェルシー、マンチェスターC。
リーガ:バルセロナ
セリエ:ユベントス、ローマ。
ブンデス:ニュルンベルク(長谷部、清武在籍時)、ハンブルガーSV
【中国Cリーグ】
中国サッカーへの造詣が深く、山東魯能をはじめ上海申花や武漢卓アルといったクラブ関係者と交流があり、Jリーグのアジア枠設置に伴い、中国人選手がJリーグへ移籍する際の窓口の一つにもなっている。また、元中国サッカー協会会長の閻世鐸氏とは何度も会食している。
08年 山東魯能のCリーグ優勝祝賀パーティーに日本人として初めて正式招待。
09年 アジアチャンピオンズリーグ 山東魯能日本人アドバイザー。
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