Jは過密日程?「知らんがな」ACLにどう向き合うか
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昨日、C大阪と広州のセカンドレグについて記事を書いたところ、ありがたくもコメントをいただいた。そして、このコメントがまた、とても的確で、私が訴えたかった部分でもあった。そのため、今日は、そのコメントに答える形で中国側の目線から見たACLについて書いてみようと思う。
昨日の記事はこちらから
コメントにもぜひ目を通してから、以下を読み進めていただきたいが、いただいたコメントの趣旨だけを説明すると、日本と中国ではACLに対するそもそもの見方が違う。その理由は「Jの過密日程」「ACLの経済効果の少なさ」ということだ。
コメントをくださったいっささんの指摘は誠に的確で、中国生活が10年になり、普段日本に住んでいない私にはなかなか伝わってこない日本やJの現状が見えた気がした。はっきりいうと、私の場合、Jの試合はACLで中国チームと対戦したときくらいしか見ない。それよりも、Cの試合をスタジアムでたくさん見るようにしている。そのほうが、より独自の視点から記事を書けるからあえてそうしているのだが、今回はそんな私の「中国目線」といただいたコメントの「日本目線」が見事にコントラストを描いて浮き彫りになった、そんな感覚だ。
結論からいうと、中国におけるACLの注目度は半端ない。
それは、中国A代表がふがいない成績なうえ、国内リーグは八百長問題があったり、そもそもサッカーのレベルそのものが高くないため、注目度が低い。中国では普通に欧州主要リーグの試合がライブでTVやネットで見られることから、サッカーファンの目は肥えている。毎週、メッシやCロナウドの試合を深夜にライブで見ている彼らには、Cリーグの試合は面白くないのだろう。
そこで浮上してくるのがACLだ。
ACLだけは中国人サッカーファンにとって毛色が違う大会に映る。
まず、国際大会であること。しかも、それがアジアの大会。さらにルール改正以降、グループステージは東西に分かれて戦うことになってから、俄然注目度が高まった。「身近な国」の代表クラブと戦うからだ。しかもその中には、日本がいる。もちろん、「歴史的」見地から中国人は意識せざるを得ない。さらには、近年、「文化遺産泥棒」と中国人が苦笑いするなど、決して関係がいいとはいえない韓国のクラブもいる。まして、ACLでは長年、中国クラブは日韓クラブの後塵を拝してきた。そこに、スポンサーの資金力で強力な補強をして一気にCを代表するクラブである広州恒大が出現した。広州なら日韓クラブにも勝てるかもしれない。注目が増す。そして、昨季広州は見事にアジアを制した…
中国人サポーターがACLに期待をかける心情は、広州のホームゲームに現れている。試合前、サポーターたちは「国歌」を斉唱するのだ。自主的に(会場アナウンスが主導して国歌を歌うわけではない)。つまりは、ある種のナショナリズム的心情が乗っかったのがACLなのである。日本人における日本代表とまではいかないが、注目度の種類としては似たものがあるといってよい。
このような中で、私は昨日の記事を書いたのだが、いっささんからいただいたコメントにあるように、日本ではあまりに過密な日程、そして賞金の少なさから、Jクラブ及び日本人サポーターのACLに対する注目度は高くない。少なくとも、中国人サポがACLに込めている願いの強さほどではないだろう。
さて。
そこで、一昨日のC大阪vs広州(セカンドレグ)なのだが、本当に両者の思惑が見事に出た試合となった。結果はこの場合参考にならない。むしろ、選手起用にある。
C大阪はフォルランを帯同しなかった上、柿谷、山口蛍がベンチスタート。リッピ監督も試合後に「相手は主力の陣容ではなかった」とコメント。一方の広州は、5点差をつけられて負けなければいいにも関わらず、しっかりと外国人3人を起用してきたし、中国人選手もキャプテンの鄭智も出場。また途中交代でガオ・リーが出てきたりと、主力を存分に使った。
つまりはセレッソと広州、JとCの間に「温度差」があったということだが、そしてそこにはもちろん、ファーストレグの結果(広州51セレッソ)というのもあったのだが、中国側にしてみたら、はっきりいうと、Jの過密日程も経済効果の薄さも、言葉は悪いが「だからなんやねん」なのである。「知らんがな」の世界だ。広州恒大にしてみればAFCの規約に則って勝負しているし、またプロのクラブとして、サポーターのみなさんにしっかりとした試合を見せることを実践しているのだ。だからこそ、リッピ監督は試合後、選手を叱った。「こんな(気の抜けた)試合をしているようでは、広州はまだ偉大なクラブとはいえない」「決して選手の疲労のせいではない」と。また、お金を払ってチケットを買って試合を見に来ているサポーターからしても、相手国のリーグスケジュールや経済効果など「知らんがな」。それよりも、金取って試合やってるんだから、しっかりした試合しろよ、本気でやれよ、である。
誤解のないように言うと、昨日の記事でも私は「C大阪を責める気にはなれない」と書いた。別にセレッソ批判をしているわけではない。ただし、一昨日のセレッソの選手起用を含めた「プロクラブ」としての振る舞いについて、中国人サポーターの目にどう映ったか。それを代弁してみたまでのことである。
JはACLとどう向き合うのか。
BEST8に1チームも送り込めなかった今季、やはり再考の必要があるのではないか。
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筆:小松英之 ツイッターはこちら
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小松英之(こまつひでゆき)
サッカーコラムニスト。
サッカー専門ブログ「BEE Football Spirit」アドバイザー、コラムニスト。
【略歴】
静岡生まれ。
小さい頃から地元の高校である清水商業(当時)や清水東、東海第一(当時)、静岡学園などの試合を見て育つ。Jでは清水サポ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。
【観戦経験】
英プレミア:マンU(香川在籍時)、チェルシー、マンチェスターC。
リーガ:バルセロナ
セリエ:ユベントス、ローマ。
ブンデス:ニュルンベルク(長谷部、清武在籍時)、ハンブルガーSV
【中国Cリーグ】
中国サッカーへの造詣が深く、山東魯能をはじめ上海申花や武漢卓アルといったクラブ関係者と交流があり、Jリーグのアジア枠設置に伴い、中国人選手がJリーグへ移籍する際の窓口の一つにもなっている。また、元中国サッカー協会会長の閻世鐸氏とは何度も会食している。
08年 山東魯能のCリーグ優勝祝賀パーティーに日本人として初めて正式招待。
09年 アジアチャンピオンズリーグ 山東魯能日本人アドバイザー。
※当ブログでは、中国1部リーグの呼称を中国で一般的に使われている「中超」に統一いたします。「中超」は中国語の「中国超級聯賽」の略です。
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