試合感覚の有無とアンカー役稲本の機能
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「オフから始まったばかりだから難しいでしょ。リーグ戦の中でやってるときと違って、ちゃんとした試合をするのは難しい」
俊輔が韓国戦の大敗について語ったコメントだ。
つまり、シーズン・オフ期である今は、試合感覚があるリーグ戦最中のようなプレーをするのは難しい、ということだ。ということは、裏を返せばシーズン中ならもっといいプレーができ、さらにはそれにより結果も変わってくるということだろうか。
確かに、シーズン中の試合感覚とオフ中のそれとは違いがあるだろう。難しいのは、では試合感覚のあるときと無いときの差がどれだけなのか、それがどれだけ実力差に現れてくるのか、ということだ。
シーズンオフということで言えば韓国も中国もそうだ。韓国も今大会で中国に03で敗れた。実力差でいえばかなり驚きの結果だが、これも試合感覚のある、なしの影響なのだろうか。
「この時期だから次に生かせば。リズムを狂わせないように、自分のクラブで立て直せばいいんじゃないかな」
これも俊輔の言だが、確かにW杯は6月である。6月の本番に向かって調整していくのが大事だ。岡田監督も「今のメンバーに新しい選手を入れ替えるとか、マジックがあるわけではない」と語っているとおり、ここから急激に選手やチームの実力が上がるわけでもない。大事なのはやはりコンディションだ。そう考えれば、試合勘が戻り、ベストのコンディションでW杯に臨めれば、今大会のような無様な姿をさらさずに済む…というのはあまりに楽観が過ぎるか。
だが、実際に国立で試合を観戦して心配なのは、試合勘うんぬんよりも勝とうという意気込みが見えないことだ。岡田監督は、(今大会を)W杯につなげよう、と選手に言ったことで、この大会で絶対に結果を残そうという気持ちがそこまで強まらなかった、という意の発言をしていたが、それにしてもあまりにも闘争本能が無さ過ぎはしないか。それが心配だ。チーム全体が心のどこかで調整だからと割り切ってしまったのか。しかし、いざ試合が始まればやはり勝負にこだわり、ゴールにこだわる、そういう本能的な部分での闘争心が少なくはないか。
そんな今大会であったが、あえて収穫を挙げるとすれば、それは稲本がアンカーに入る形が機能していることだ。さすがにヨーロッパを歴戦してきただけはある稲本は、アジアの選手相手なら十分な守備能力を発揮した。特にインターセプトと、相手が守備から攻撃に切り替わった直後のつぶしがよくできていた。岡田監督は「稲本の場合がこうで、ほかの誰かだったらこうで、というふうなチーム作りは今はするべきではないと思っているので、あえて(ボランチを)ダブルで並べています。」と語っているが、アンカー稲本にかなりの手ごたえを感じているはずだ。しかも今年からJに復帰し、定期的に試合に出場できるはずで、そういった計算ができることは大きい。
さて。過去はもういい。岡田監督続投も決まった。次戦3月3日はアジアカップ予選の消化試合とはいえ、監督は欧州組の五人、俊輔、長谷部、松井、本田、森本の招集を要請している。6月の本番まであと約4ヶ月。本番で結果を残して、岡田監督更迭論を唱えず、信じて支え続けた人たちに歓喜と感動をもたらしてほしい。
筆者紹介:小松英之(こまつひでゆき)
サッカーコラムニスト。中国語教師。龍飛中国語会話スクール名誉講師。サッカー専門サイト「BEE Football Spirit」アドバイザー、コラムニスト。
静岡生まれ。
小さい頃から地元の高校である清水商業や清水東、東海第一(当時)、静岡学園などの試合を見て育つ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。その他チェルシー、マンチェスターC、ユベントスなどの観戦経験あり。
中国サッカーへの造詣が深く、山東魯能をはじめ上海シンハや武漢光谷といったクラブ関係者と交流があり、Jリーグのアジア枠設置に伴い、中国人選手がJリーグへ移籍する際の窓口の一つにもなっている。
08年 Cリーグ武漢光谷のスポンサー募集窓口担当。
08年 山東魯能のCリーグ優勝祝賀パーティーに日本人として初めて正式招待。
09年 アジアチャンピオンズリーグ 山東魯能日本人アドバイザー。
山東魯能でコーチを務める張海濤コーチとは家にも行ったことがあるほどの仲。張コーチは08年、ドイツのケルンFCにてコーチ留学を終えて帰国した。ドイツでのコーチ留学の状況を聞けるなど、貴重な交流を重ねている。
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