ラージグループ(大枠の代表選手)という新しいサッカー用語
ラージグループ(大枠の代表選手)という言葉がある。
これは今後、メジャーなサッカー用語として定着していくであろう。
ラージグループ(大枠の代表選手)とは、はっきりとした定義があるわけではないが、要約するとこういうことだ。
ナショナルチームの公式戦は、通常登録メンバーは18名である。
しかし、代表選手を選ぶときは当然18名だけを選ぶわけではない。
代表戦の前には必ず代表合宿があり、そこには登録数である18名以上の選手が呼ばれる。そして、その合宿を通して数名の選手は淘汰され、最終的に18名が登録される、というのが普通である。
さて、代表には常に選ばれる「代表常連組」がいる。
今の日本代表で言えば中村俊や中澤、遠藤、川口、楢崎といった選手たちだ。これらの選手達は怪我や病気など、よほどのことがない限り必ず代表に招集される。
またその一方で、代表に呼ばれたり呼ばれなかったり、もしくは登録選手である18名に入ったり入らなかったりという選手もいる。
その時々の選手自身のコンディションや、パフォーマンス、或いはそのときのチーム状態や戦績や次試合の相手や監督の戦術など、実に多くの要素から、その時々にふさわしい選手がランダムに入れ替わる。
そして、この「常連組」と「ランダムに入れ替わる選手層」を合わせると、とても18名には絞りきれない。そして、定期的に召集されるいわゆる「初代表入り」の選手を含めると、その数は30名を超える。
また、代表チームは常にベストメンバーがそろうとも限らない。
特にいわゆる「海外組」と呼ばれる選手達の場合、ほとんどはヨーロッパでプレーしているため、移動や現地リーグのスケジュールなどから、どうしても召集しにくい、あるいは召集しても練習時間が十分とれず、連携に不安を残すかもしれない、などの不安定要素がある。
これらの状況から、代表には「代表2軍」或いは「代表Bチーム」とまではいかないが、しかし完璧なメンバーではなく、状況によって臨機応変に対応できるような「チーム構成の幅」が必要になってくる。それが、いわゆるラージグループ(大枠の代表選手)という概念だ。
ベストのメンバーが組めなくても、極端な戦力低下が起こらず、ベストメンバーと同じだけの戦いが十分にできるチーム、そのチームを構成できる選手、もっといえば、計算できる選手たちを含めたメンバーの集まりをラージグループ(大枠の代表選手)と呼ぶ。
かなり難解でややこしくなったかもしれないが、日本人は抽象的だけどなんとなくコンセプトを捉えている、というような言葉を良く生み出すし、そういう言葉の使い方はうまい。今後、この言葉はサッカー界でよく聞かれることになると私は予想している。
思えばこれまでにも、日本サッカー界は様々な言葉を生み出してきた。「アイコンタクト」「ゾーンプレス」「フラット3」「ボランチ」「トップ下」。海外で使われていたものを直接持ち込んだものもあれば、海外から持ち込んだものを日本的に消化して、日本語として確立してしまったものもある。
今後も日本サッカー界は、どんどん新しい言葉やコンセプトを生み出していくことであろう。そして、単に新しいものを生み出すだけでなく、日本サッカーの発展に伴う形で新たな言葉やコンセプトが生まれてくるようにしなければならないと思う。
筆者紹介:
小松英之(こまつひでゆき)。静岡生まれ。
小さい頃から地元の高校である清水商業や清水東、東海第一(当時)、静岡学園などの試合を見て育つ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。中国のプロサッカーリーグであるCリーグの観戦多数。
また、中国女子サッカー代表の監督を務め、現在Cリーグの強豪・山東魯能でコーチを務める張海濤コーチとは、家にも行ったことがあるほどの仲。同コーチは今年、ドイツのケルンFCにてコーチ留学を終えて帰国した。ドイツでのコーチ留学の状況を聞けるなど、貴重な交流を重ねている。