なぜ長友は開幕から2ゴールも上げられたのか?
イングランド・オランダ・日本・中国の各国の指導者ライセンスを所持するサッカースクール!
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インテル長友、開幕戦から2連続ゴール。
最高の結果を引っさげて、日本代表へ合流した。
長友は過去、インテルでシーズンを通して2ゴールが最高だった。それが、今季は2試合で2得点。何が起こったというのだろうか?
インテルの開幕から2試合を見ていてわかったのは、非常に単純ながら、長友がかなり積極的にゴール前へ飛び出しているということだ。いや、長友だけではない。長友とは逆の右サイドを務めるジョナタンも同様だ。どうやらここに原因がある。
今季、マッツァーリ監督が就任してから、インテルは3バック。昨季は3バックと4バックを併用していた。そして、マッツァーリ監督の3バックはかなりオリジナリティーがある。選手の流動が激しいのだ。
第二戦のカターニア戦を振り返りながら、長友がゴールを上げている理由を探ってみる。
3バックのため、長友は左MFの位置にいる。つまり、最初から4バックのときよりも高いポジションにいる。ただし、カターニアは3トップ気味の布陣だったため、長友は後方への意識、つまり守備への意識が高い左MFだった。実際、前半はカターニアのレトの仕掛けが攻撃の中心になっていたため、そこをケアーしつつ、そして相手が逆サイドから攻めてきた場合は中へ絞りつつ、という意識が高かった。しかし、そうなると攻撃姿勢は慎重になりがちだ。昨季までの長友だったら、そうだったであろう。
しかし、今季は違った。
恐らく、チーム内に決まりごとがある。そしてそれは監督の指示であり、戦略だ。
右のジョナタン、そして左の長友は、お互い、逆サイドの選手が切れ込んでクロスを上げられる状態になったら、積極的にゴール前に顔を出す。試合を見ていて、思わず「え?長友がここに?」「あ、ジョナタンが上がってる!」というシーンが幾度も見られた。
サイドバックの攻撃参加といえば、まずはオーバーラップ。そしてクロス。もしくは、ドリブルで持ち込んで、中へ切れ込んでシュート。攻撃といえば、パターンとしてはこれくらいだ。しかし、後方への意識を持ちながらといえども、MF登録されて、SBよりは高い位置でプレーするため、この攻撃パターンからもうひとつ加わる。それが、逆サイドのクロスにはゴール前で合わせるというものだ。
インテルはジョナタン、長友のほかに、もう一枚前でプレーする攻撃的MFがいる。カターニア戦ではそれがコヴァチッチ(左)とグアリン(右)だった。この二人が、「逆サイドからのクロスにゴール前で合わせる」のは当然のことだ。しかし、今季のインテルはこのほかに、もう一枚加わる。ジョナタンと長友だ。しかもこの二人は、3バックの守備のサポートにも献身的に加わる。すごい運動量とスプリントだ。
長友の2ゴールがいずれもヘディングというのが象徴的だ。逆サイドからのクロスには、相手のクリアボールやこぼれ球をPAの外で待つのではなく、ゴール前に飛び出して、合わせろ。ヘディングでゴールが決まる所以である。
もちろん、これにはリスクが伴う。長友が右サイドのクロスに合わせに行き、ゴール前まで顔を出す。しかし、相手ボールになる。当然、長友のスペースが空く。相手はそこを突く。ここまでの2試合では、ボランチや3バックの一枚がそこをうまくカバーしていた。つまり、機能していた。だから、リスクを犯して攻めに行って結果が伴っているのである。
この戦術の真価が問われるのはむしろこれから。ジェノア、カターニアと中堅クラブとの2試合を終えて、次節、インテルはユーベと対戦する。果たして、ユーベ相手にこの戦術がどこまで通用するか。ユーベ相手にも、この2試合同様、積極的に前へ出られるのか。ユーベ相手にも、この2試合同様、サイド選手の攻撃参加後のカバーリングがうまく機能するのか。
また、今後試合が進むに連れて、対戦相手も当然、今季のインテルを研究してくる。そんな中、勝ち点を上げ続けることができるのか。
まずは、日本代表での好調長友に注目したい。
筆:小松英之 ツイッターはこちら
小松英之(こまつひでゆき)
サッカーコラムニスト。
サッカー専門ブログ「BEE Football Spirit」アドバイザー、コラムニスト。
【略歴】
静岡生まれ。
小さい頃から地元の高校である清水商業や清水東、東海第一(当時)、静岡学園などの試合を見て育つ。Jでは清水サポ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。
【観戦経験】
英プレミア:マンU(香川移籍後)、チェルシー、マンチェスターC。
リーガ:バルセロナ
セリエ:ユベントス、ローマ。
【中国Cリーグ】
中国サッカーへの造詣が深く、山東魯能をはじめ上海申花や武漢卓アルといったクラブ関係者と交流があり、Jリーグのアジア枠設置に伴い、中国人選手がJリーグへ移籍する際の窓口の一つにもなっている。また、元中国サッカー協会会長の閻世鋒氏とは何度も会食している。
08年 山東魯能のCリーグ優勝祝賀パーティーに日本人として初めて正式招待。
09年 アジアチャンピオンズリーグ 山東魯能日本人アドバイザー。
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