岡田ジャパン「完敗」から見えるもの
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20日、サッカー日本代表は札幌ドームにてウルグアイとの親善試合を行った。結果は日本1-3ウルグアイ。試合後岡田監督は選手達に「完敗だ」と語ったという。
さて、この試合。
親善試合であり、テストマッチであり、交代が6人まで可能であり、日本代表は初招集の選手も多く、またこの試合のメンバーでの練習回数も少ない、という背景がまずあった。
一方のウルグアイは遠征の疲れや時差の問題があったものの、メンバーは怪我の選手を除けばほぼベストメンバーで、試合も手を抜くことなく本気でぶつかってきた。
そしてこの結果である。当然といえば当然か。
しかし、この試合で見せつけられたのはウルグアイの「試合巧者」としてのうまさと、1対1の強さだった。
「強いライバルと対戦するときは、相手のディフェンス陣の仕事を増やす必要があると思う。その意味で、日本が攻める起点を悩ませることにした。そうすることで日本の攻撃がビルドアップできなかったと思っている」
タバレス監督の試合後の会見はこちらから
南米でもまれてきたいかにも「巧者」らしいコメントである。
この日の日本代表は得意とするサイドバック攻撃がなりをひそめた。しかも、攻撃に上がれないだけでなく、相手の両サイドに十分なプレッシャーを与えることもできていなかった。それゆえDFラインは下がり気味にならざるを得なくなった。
後半に阿部をDFラインの前に置くようにしてから徐々に改善されてきたが、しかし後半は選手交代もあったため、最後まで見極めることはできなかった。
そして、1対1の強さである。
元々南米の選手は個人技がうまいことで有名。それは古豪ウルグアイにももちろん言えることだ。
しかし、1対1と聞くとドリブルで交わすことをイメージしてしまうのだが、現代サッカーでは決してそれだけではない。プレッシングがこれだけ浸透した現代サッカーでは、1対1のうまさはドリブルで抜くことだけでなく、ボールを持っていないときの動きも含まれる。
この試合、日本はウルグアイに対してプレッシングを行っていなかったわけではもちろんない。むしろ、小野選手が試合後のインタビューで、
「このチーム、よく走りますね。僕ももっと走らないと」
と語っており、日本の選手はよく走り、プレッシングをかけ続けた。
しかし、ウルグアイの選手はそのプレッシングを「かわす」うまさに長けていた。それがウルグアイの、そして世界の1対1の強さではないか。
オシム監督が指揮を取って以来、日本代表に「走るサッカー」が定着した。そして、オシム監督は「走りながら考える」「トップスピードの時のプレーの正確さ」を追及しようとした矢先、病に倒れた。
今、日本代表の課題はここにあるのではないか。
走ることは定着した。今度は、プレッシングをうまくかわしていく相手にどのように対応するのか。走りながら、いかにプレーの精度をあげてミスを減らすか。
昨日のウルグアイ戦はあくまでW杯の準備に過ぎない。
負けたことは悔しいが、W杯最終予選で勝ち星を重ねて、まずはW杯出場を獲得してほしい。
ファンはただそれだけを願っている。
筆者紹介:
小松英之(こまつひでゆき)。静岡生まれ。
小さい頃から地元の高校である清水商業や清水東、東海第一(当時)、静岡学園などの試合を見て育つ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。中国のプロサッカーリーグであるCリーグの観戦多数。
また、中国女子サッカー代表の監督を務め、現在Cリーグの強豪・山東魯能でコーチを務める張海濤コーチとは、家にも行ったことがあるほどの仲。同コーチは今年、ドイツのケルンFCにてコーチ留学を終えて帰国した。ドイツでのコーチ留学の状況を聞けるなど、貴重な交流を重ねている。