【公式】松本忠之「中国人は反日なのか」(コモンズ出版)著者のブログ

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コラム:チェルシー中国ツアー観戦記 in MACAU

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7月26日。キックオフ2時間前。

もう午後6時だというのに、空はかんかん照りの太陽で、まったく夜の気配はない。沖縄よりも南に位置する南国マカオの夏は昼間がやたらに長い。

とりあえず当日販売のチケットを確保してスタジアムを一周してみる。さすがに2時間前では人はまばらだが、欧米人の姿をよく見かけた。おそらく、中国や香港に住む欧米の人たちもこの試合を楽しみにわざわざマカオまでやって来たのであろう。まだ真昼のように明るいのに、スタジアムの照明はすべて灯っていた。

ここマカオは1999年に中国に返還されるまでポルトガルによって統治されていた。それ故、街にはヨーロッパ風の建物と中国式が混ざり合って並び、看板にはポルトガル語と中国語が表記されている。

長年カジノをメインとした観光を主軸産業にしてきたマカオは、中国返還とともに大きな転換期を迎える。北京政府の規制緩和に伴い、大陸中国から多くの観光客がやってきた。元来、ギャンブル好きの中華民族である。毎晩のように高額な掛け金でゲームが行われ、カジノで破産して自殺者が出るほどの熱狂ぶりだ。

そして数年前にはなんとカジノの売り上げであのアメリカ・ラスベガスを抜いて世界第1位となった。東京や大阪、ソウルなどからも直行便が開通し、更なる集客に熱を入れている。マカオは大陸中国と並んでバブル期なのだ。

実際、筆者が中国から国境を越えてマカオに入り、スタジアムに向かうまでにもたくさんの建設中のカジノやホテルがあった。最近は外資の大手デベロッパーも次々にマカオに参入してきている。

まさか今夏、フレンドマッチとはいえチェルシーの試合を会場で観戦できる機会があるとは思ってもいなかった著者は、そのニュースを聞くや否やすぐにスケジュールを空けてこの日を待ちに待っていた。

とりあえず、試合までにまだ時間があったので、腹ごしらえをしようとスタジアムのポルトガル料理屋へ。マカオのレストランは、ポルトガル料理とはいえ中華がミックスされているため、ボリュームがあり、とても美味だ。

食事を取りながら今回のチェルシー・アジアツアーの帯同選手をチェックする。事前情報で、バラックマカオからチームに合流するが、試合には出られないであろうことは知っていた。

しかし、それでもすごい顔ぶれだ。

ランパート、ジョー・コールアネルカアシュリー・コール、テリー、チェフ、ライト・フィリップス、エシアン、カルー、リカルド・カルヴァーリョなどなど。

そして一番の注目は20番、”チェルシーの”デコだ。

ユーロでの活躍ぶりは今だ記憶に新しい。チェルシーに移籍して、デコはどのように他選手と連携するのか。そしてチームはデコの加入によってどのように変化するのか。まだまだこれからとはいえ、やはり自然と盛り上がってしまう。

食事を終えていよいよスタジアムへ。選手たちはアップを行っている。スタジアムの一角に陣取った青い人の塊の前には横断幕が掲げられ、大きく「切尓西球迷会」と書かれている。「チェルシーファン(マニア)の会」という意味だ。

アップが終わり選手たちが引き上げると、簡単なセレモニーがあり、いよいよフレンドリーマッチチェルシーvs成都(Cリーグ)の試合が始まった。

メンバーもフォーメーションも激しく変更したため、詳細は省略するが、前半、何よりも見ものだったのはランパートとデコの中盤だ。このふたりが一緒にプレーしているなんて…そう考えただけで興奮を抑えられない。

この試合では、エシアンが中盤の一番深い位置にポジションを取り、その少し前にランパート、その更に少し前にデコ、という布陣だった。序盤、攻撃の起点となっていたのはランパート。しかしランパートにマークが集まり始めると、しだいにデコのボールキープ率が高くなる。ランパートは中盤の深い位置から正確なロングボールを両サイドに供給し、デコはボールキープからためを作り、攻撃のリズムを作り出す。この二人のコンビネーションが見れただけでもマカオまでやってきたかいがあったというものだ。

一転して後半はランパートはベンチに下がり、ジョン・コールが登場。右サイドで起点となりいく度となくチャンスを演出する。大幅にメンバーが入れ替わる中で、90分出場したデコは後半やはり攻撃の起点となり、チームのリズムを作る。デコから右サイドのジョン・コールへ、DFラインの裏へ抜けるパスが通るたびに会場からどよめきが起こる。素晴らしいの一言だ。

試合は結局70でチェルシーが勝利した。

また、この試合で最もプロフェッショナルな姿勢を見せてくれたのはランパートであった。試合開始前にも自陣コートをぐるりと回って観客を煽る。、コーナーキックの際にもスタンドを煽る。そのたびに会場が盛り上がり、始めは遠慮気味だった観客もいつの間にか試合に熱中させられていた。プレー以外でも、会場を盛り上げていい試合を作ろうとするその姿勢に脱帽する思いであった。

午後10時過ぎに試合が終了。

翌日の予定に合わせてマカオに宿泊できなくなってしまい、12時で閉まってしまう国境を越えるために急いで会場を後にしたが、国境へ向かうバスの中でも試合の残像が浮かんでは消えていた。

所詮フレンドリーマッチなんだから、と自分を冷静にさせようとするが、世界一流のプレーをこの目で、あんなにも間近で見れたことにはやはりいつまでも興奮を隠し切れなかった。

筆者紹介:

小松英之(こまつひでゆき)。静岡生まれ。

小さい頃から地元の高校である清水商業や清水東、東海第一(当時)、静岡学園などの試合を見て育つ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。中国のプロサッカーリーグであるCリーグの観戦多数。

また、中国女子サッカー代表の監督を務め、現在Cリーグの強豪・山東魯能でコーチを務める張海濤コーチとは、家にも行ったことがあるほどの仲。現在同コーチはドイツのケルンFCにてコーチ留学中で、ドイツでのコーチ留学の状況を聞けるなど、貴重な交流を重ねている。