ロシアW杯アジア予選に向けて見えた代表チームの課題
※当ブログでは、中国1部リーグの呼称を中国で一般的に使われている「中超」に統一いたします。「中超」は中国語の「中国超級聯賽」(中国プレミアリーグ)の略で、日本でいうJ1に相当します。
また、香港プレミアリーグについては「香港超級聯賽」と記します。
国際親善試合 中国(H)11チュニジア
日本での親善試合を終えて中国の南京に乗り込んできたチュニジア代表を迎え撃った中国代表。FIFAランキングはチュニジア25位。中国83位。この格上との対戦を、私は個人的に「ロシアW杯アジア予選での強豪国との戦い方」を探る視点から見てみた。
結果として引き分けたことはポジティブだ。明らかに実力差があるし、たとえ中国のホームであっても、そして相手がベストメンバーでなくとも、それでもアフリカの強豪国に勝つのは簡単ではない。それに、先に日本で試合をしてから中国入りしたチュニジアは時差によるコンディション不良はない。そのチュニジア相手に先制されながらも、中国GK王大雷の見事なPKセーブもあり、試合終盤に追いついて引き分けたことはアジア予選に向けて非常にポジティブな結果だ。
この試合から読み解く中国代表のアジア予選での戦い方は、まずは守備をしっかり固めること。そこからのカウンター、もしくはカウンターではなくとも、手数をかけずに、またパスを回してポゼッションを狙うでもなく、隙を見つけたらとにかく縦に早いパスで一気に相手DFの裏を突く攻撃パターンだ。その理想的な展開が見られたのが前半32分の攻撃。最終ラインのCB霆からポストプレーに入ったFW旭へスピードのある縦パス。旭はそれをポストプレーからわずか2タッチですぐ近くにいた吴曦に渡し、吴曦はワンタッチでDFの裏に飛び込んだ武磊へ。武磊はチュニジアDFの裏を取ってフリーでシュートを放つが、これはチュニジアGKの好セーブに遭ってしまう。しかし、ゴールが決まらなかったこと以外は完璧なプレーで、恐らくこの形がぺラン監督が求めている中国代表の攻撃パターンなのだろう。アジア予選でもぜひ、このパターンによるゴールを見せてほしい。
ただ、「守備を固めて」の部分に問題があるのも露呈してしまった。例えば前半19分にゴールを脅かされたプレーは、左からのクロス1本でいとも簡単にDF3枚の裏を突かれてシュートまでもっていかれた。幸い、相手がシュートをはずしてくれたが、DF3枚に対して、チュニジアの選手は2枚、裏に飛び出していた。このあたりの最終ラインの守備は早急な整備が必要だろう。
最終的には、後半ロスタイムにFKからチュニジアGKがファンブルしたこぼれ球を77分から交代出場していた于大宝が押し込んだゴールで11のドローに持ち込んだ中国代表。DFの精度、特に最終ラインの精度をどれだけあげられるか。そして、縦に早いあの攻撃パターンを1試合の中でどれだけ出せるのか。そこに中国代表の2002年日韓大会以来の、悲願のW杯本大会出場の鍵があるように思えてならない。ペラン監督がどこまでチームを作り上げてくるのか。
注目だ。
松本忠之(まつもとただゆき)
サッカーコラムニスト。
サッカー専門ブログ「BEE Football Spirit」アドバイザー、コラムニスト。
【略歴】
静岡生まれ。
小さい頃から地元の高校である清水商業(当時)や清水東、東海第一(当時)、静岡学園などの試合を見て育つ。Jでは清水サポ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。
【観戦経験】
英プレミア:マンU(香川在籍時)、チェルシー、マンチェスターC。
リーガ:バルセロナ
セリエ:ユベントス、ローマ。
ブンデス:ニュルンベルク(長谷部、清武在籍時)、ハンブルガーSV
【中国Cリーグ】
中国サッカーへの造詣が深く、山東魯能をはじめ上海申花や武漢卓アルといったクラブ関係者と交流があり、Jリーグのアジア枠設置に伴い、中国人選手がJリーグへ移籍する際の窓口の一つにもなっている。また、元中国サッカー協会会長の閻世鐸氏とは何度も会食している。
08年 山東魯能のCリーグ優勝祝賀パーティーに日本人として初めて正式招待。
09年 アジアチャンピオンズリーグ 山東魯能日本人アドバイザー。
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