【公式】松本忠之「中国人は反日なのか」(コモンズ出版)著者のブログ

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【縦横無尽】特定保健指導プログラム

 

日本では40歳になるといろいろ新しいことが勝手に始まるらしい。先日、特定保健指導プログラムなるものに呼び出されて参加した。40歳を過ぎて、血圧、血糖値、中性脂肪コレステロール、体重、腹囲など、いくつかの要素に基準値を設けてそれをひとつでも超えると「指導を受けに来い」ということらしい。

初めてなので受けてみた。若い女性の指導員だった。型通りなのは予想していたが、あまりにもパターン化された質問ばかりをいきなり立て続けにされたあげく、その回答を過去の健康診断の数値と照らし合わせて「指導」を始めたので、私はスイッチが入るか入らないかの境目を何往復もすることになった。

ご丁寧にお茶碗に盛られたご飯の模型をテーブルに置いて「朝食はパンですか?ご飯ですか?」と聞かれたので「肉まんとか焼き小籠包、おかゆですかね。でもおかゆに油条は入れません。油っこいので」と返そうかと思ったが、さすがに40歳になるとこの若い女性指導員を困らせるほうに同情が行ってしまいやめた。

それでも「松本さんの食生活をお見受けすると…」と言い出すから、今度はそもそも私が25歳から35歳まで中国に住んでいたことを知らないこの若い女性指導員に、「私は豚の脳みそ、蛇、ウサギ、カエル、サソリ、ザリガニなども食べてきた。四川料理が好きで炒めた花椒をそのままぼりぼり食べる。ラーメン?蘭州ラーメンは時々食べてましたよ。パクチー抜きでね。その10年間の私の食生活が今の私にどう影響しているのか、明確にご指導いただけるんですか?」とも言いたかったが、それもこらえた。大人になったもんだと思う。

しかし、最後はやはり言ってしまった。その指導員は体重を減らせという。それは言われなくてもわかってると心中で呟いたが、今度は三ヶ月後の再指導の時までに体重を数キロ落として臨んでいただくのはどうだと提案してきた(もちろん再指導を受けるかどうかは強制ではないとも)。さすがにこれにはスイッチが入った。

「ではお伺いしますが、あなたの指導通りの食生活、体重、血圧、血液の数値になったら、私は何歳まで生きられますか。そしてあなたはそれを保証できますか」。もちろん、指導員は苦笑で「それはできませんが…」である。

そもそも、この指導員は自分が指導した人に対して責任は負わない。この人の指導を受けて、大好きな酒もタバコもラーメンも寿司も止めて、それで脳梗塞になった人が仮にいたとして、「あんたの指導通りに全部やったのに、脳梗塞じゃないか。責任取れ」と言っても、この人は責任は取らない。「そんなの自己責任だ」で終わり。要はその程度の「指導」なのである。パターン化された質問をし、健康診断の数値を見て、過去の経緯など無視で指導する。よくもそんなものを指導と呼べたものだと思う。

言いたかったことは、現代は生老病死に対してあまりに数字だの基準だのパターンだので対面しすぎているということ。数値をある範囲内に入れれば人間は長生きするらしい。そんな観念の世界では、「個体差」という単語はもはや死語だろう。

だから私は最後に指導員にこう言った。
脳梗塞やら心筋梗塞やら言いますが、人間死ぬ時は死にますよ。それはあなたも例外ではない。死ぬタイミングは誰も数値にできませんから」。
とんでもない面倒なオヤジに当たってしまったとあの指導員は今ごろ同僚に話しているかもしれない。

※健康管理を否定しているわけでも、してないわけでもないので悪しからず。

 

中国人は「反日」なのか: 中国在住日本人が見た市井の人びと

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