【公式】松本忠之「中国人は反日なのか」(コモンズ出版)著者のブログ

中村祐人、コラム【縦横無尽】、ビール、アメリカ、中国etc

中村祐人インタビュー2016春 3/3

—シーズンが終盤に差し掛かっている今、具体的な勝ち点計算をチーム内でするようなことはあるのでしょうか?

中村「それはしづらいですね。直接対決が残っているので、要するに、そこで勝てば残留なので」

—昨年にこのまま続けていれば結果が出るとおっしゃっていて、一時期はチームが壊れかけたこともあったものの、結果的にいい流れになっている。内容は決して中村選手のイメージ通りではなかったかもしれませんが、続けていれば結果が出てくる、ということに関しては、その通りになりましたね。

中村「このチームは決して弱くはないとずっと思っていましたから。だから、タイミングというか、きっかけがあれば、必ず結果は出てくると信じていました」

—なるほど。きっかけですね。それにしても、改めて思いますが、サッカーというスポーツは、ゴールひとつで、そんなにも劇的に変わるものですか?

中村「変わりますね。本当に変わります。特にうちはそれまで、得点力不足に悩んでいたチームだったので。それが、あんなにもあっさりと得点が決まってしまった(第13節のサザン戦の1点目を指している)。チームとしても、得点に対する意識が高まったと思います」

—第14節のメトロ戦では、3点を奪って勝利していますね。昨年までと、今年に入ってからと、チームの得点パターンに変化はありましたか?

中村「練習ではポゼッションや細かいパス交換からゴールを奪う形をずっとやってきましたが、高さのあるFWが入って、ダイレクトにそこに当てられるようになったことで、セットプレーだったり、それからうちはロングスローも得意なんですが、ロングスローやシンプルなクロスからとか。そういうところからのゴールが期待できるようになったというのは、実際にプレーしていて感じますね。そういう意味では、得点パターンのバリエーションは広がったのかもしれません」

—ただ、チームが勝っているなかでも、中村選手自身のゴールはありません。その点については、どう感じてらっしゃるんですか?

中村「まぁ、そこは、僕自身にゴールのチャンスがなかったわけでもないので…ただ、今はとにかくチームが勝つこと。それが最優先ですね。自分のゴールについても、まだ残り3試合あるので、そこで、しっかりと決められればと思って練習に取り組んでいます」

本筋とは逸れてしまうが、最後に私は、ストライカーの「エゴ」について聞いてみた。

—これは生粋のストライカーである中村選手であるからこそお聞きしたい質問なのですが、チーム状況としては自身のゴールよりも今は勝つことが何よりも必要であるという状況の中で、でもストライカーとしてゴールを決めるんだというエゴは必ずあると思うんですよね。そういうのは、自分でエゴを押さえつけるようにコントロールするものなのでしょうか?それとも、チーム状況が自然と自身のエゴを消してしまうものなのでしょうか?

中村「(少し考えて)エゴが消えるということはないですね。自分がゴールを決めるんだというのは、当然、もう毎秒思っていることなので。でも、もちろんチーム状況もある。だから、そこは常に様子を見ながら…という感じですかね」

—試合のあのピッチに立てば、当然、自分がゴールを決めるんだという思いが湧き上がってくるのがストライカーだと思うんです。でも、そういう思いが自身のプレーをエゴイスティックなものにする、ということは中村選手の場合、ないんですか?

中村「ないですね。もちろん、試合になれば絶対に決めてやろうって思いますよ。でも、実際のシチュエーションで、自分よりもいいポジションに味方選手がいれば、自分はそこに出す。自分よりも最後はチームのため、というのはありますね」

—少し話が早いかもしれませんが、来シーズンについては何か考えていますか?

中村「考えていないこともないですが、今はやはり今シーズンをしっかりやりきることだと思っています」

—残り3試合、期待しています!ありがとうございました。

【編集後記】

「自分がゴールを決めるんだというのは、当然、もう毎秒思っていることなので」

インタビュー中、中村選手がこのフレーズを語ったそのくだりを、私はレコーダーで何度も聞き直した。そして確信した。

「毎秒」という単語が、きわめてすんなりと、一切の躊躇や言葉詰まりもなく発せられている。「いつも」とか「常に」ではなく、「毎秒」。

それはそのまま、「自分がゴールを決める」という意思が、彼の身体に染みついていることを表している。「常にそう考えている」のでもなく、「そういうつもりでやっている」のでもない。

それはまるで、人間が呼吸をするときに、いちいち「呼吸をしよう」と考えないのと同じなのだ。考えるまでもなく、身体に染みついているのである。

そんな彼のゴールを期待するなというほうが無理である。こういうところが、私が彼への注目を片時も外すことができないディテールになっていると感じた。

もうひとつ、今回の取材で感じたことがある。

私はこれまで、何度も中村選手を取材させていただいた。そのおかげで、今はすっかり当初のような(悪い意味での)緊張はなく、リラックスしてインタビューを取れるようになった。そして、中村選手もこちらの質問の意図を汲む時間が圧倒的に早くなったように思う。改めて、この選手は「サッカーを言葉にする」能力に長けていると感じた。実際、今回のインタビューの中で、私は中村選手のそういったクレバーな部分に助けられた部分があった。

インタビューの難しさは、予定調和ではないところにある。こちらは、最終的に記事にすることを目的に質問を繰り出すが、返ってくる答えは当然、こちらの意図と同じ場合ばかりではない。もっと単純にいえば、「どんな答えが返ってくるかはわからない」。それがインタビューの難しさである。返ってきた答えを元に、その場で、次の質問を考え、答えを導いていかねばならない。しかも、そのやり取りはテンポがよくないと、答える側も気持ちよく答えられない。

そう意識すればするほど、時にこちらの言葉が変に長々しくなったり、的を得ないものになったり、あるいは話していて我ながら「ちょっと伝えたいニュアンスになってないな」と感じてしまうこともある。もちろん、それは私のインタビュアーとしての技量の少なさに原因があるのだが、そんな時、中村選手はこちらの質問の意図をさっと汲んで言葉を発してくれる。しかも、その回答は的を得ている。こちらが聞きたいことにしっかりと答えてくれているのだ。

キャプテンとしてチームを引っ張る今シーズン。こういったコミュニケーションの「的確さ」や「相手の意図を汲む」能力によって、きっと多くのチームメートが中村キャプテンによって自信を得たり、気持ちを切り替えたりできているに違いない。そう思った。なにせ、私のようなレベルの低いインタビュアーですら、しっかりサポートしてくれるのだから。

インタビューを終えてレストランを後にしたときも、雨は止むことなく、降り続けていた。