【縦横無尽】春風駘蕩の樹木希林さんを偲ぶ
多くの人に愛されたのは、役者としての圧倒的な技量とキャラクターだろう。
樹木希林さんである。
なんだろう、あの演技。私は晩年の映画作品しか見ていないけど、希林さんが出てると安心する。映画が引き締まるからだ。映画は製作費が高いから、主演クラスは演技の技量だけでは選ばれない。正直、演技力が「??」な役者もいるが、そこに希林さんがいることで、ぐっと引き締まる。あの演技とは思わせない、こういう人いるよなぁという存在感。技量という次元を超越している。ここまでの女優さんは、桃井かおりさんと吉田羊さん、男優さんでは山崎努さん、佐藤浩市さんくらいか。
そして、多くの人が心の底で羨ましいと思っているであろう、あの生き方。
「マネージャーはつけない。マージンが嫌だから」
「仕事を選ぶ基準は、オファーの順番とギャラ」
「別居婚するけど離婚はしない」
およそ、日本ではタブーとされることをやっていても淡々と語る。なのに、嫌味がない。
まさに春風駘蕩。春風がそよぐように、穏やかに永眠されることを祈って。