【公式】松本忠之「中国人は反日なのか」(コモンズ出版)著者のブログ

中村祐人、コラム【縦横無尽】、ビール、アメリカ、中国etc

【縦横無尽】「社会に出る」

「社会に出る」
私の嫌いな日本語に「社会に出る」というのがある。意味は、要するに人生で初めて社会人となって仕事をするということだ。仕事する前は大概の人が学生だから、学生に対して使われることが多い。
はて。では、学生はどこに存在しているのだろうか。言葉上では、子供や学生はまだ社会に出ていないということになるからだ。子供や学生がいない社会に、明るい未来はあるのか。
ここで言う「社会に出る」が「仕事する」ことだとして、では、社会に出てみたらどうか。東芝は不正会計だし、三菱自動車神戸製鋼はデータ偽装である。「そういう、清濁併せ持つ社会に出て、荒波に揉まれろということだ」。社会に出ろ、まともに働けという大人は、次はこう言うのか。いずれにしろ、学生が出るべきとされる社会は、警察や教師、医師の不祥事を含めても、決して清浄なる世界ではない。
思うに、あの偉そうな態度がいけないのだろう。「社会に出ろ」と学生相手にのたまわる大人(あくまで一部)は、なぜあんなに偉そうなのか。そういえば、学生相手に「社会ってのはな」と偉そうにのたまう大人もいたな。そこには(学生のお前らにはわからないだろうが)という心理が見え隠れ、いや、丸出しであった。
いつから社会に「出る」という言い方が定着したのかはわからないが、どうせなら「デビュー」のほうがよっぽどいい。「いよいよデビューだな」「まだデビューしないのか?」「デビュー先は決まったか?」。こっちのほうが、よっぽど希望がありそうだ。「早く社会に出ろ」より、「君の一日も早いデビューを待ってるよ」と学生に伝えるほうが価値的に思えるのは私だけだろうか。
東芝三菱自動車神戸製鋼だと言ってるが、じゃお前はどうなんだ。そう言われたら、あたしゃ駄目ですよと言うしかない。あたしにゃ、不正会計を指示して収益を水増ししたり、データ偽装を指示して取引先をキープしたりするような高い地位も強い権限もない。仕事が終わりゃビール片手に「今年の清水エスパルスは…」などと愚痴るのが関の山。だから、私は学生相手に「早く社会に出ろ」「社会とは…」などとは口が裂けても言ったことはない。逆に、「社会に出てないなら、子供と学生はどこにいるんだ?」などと的はずれなことをのたまう。でもそれでいいと思っている。子供や学生は社会の外にはいない。社会に出てないなんてことはありえない。社会を構成する大事な大事な人たちで、未来はこの人たちに委ねる以外にないのだ。その意味では、別に「社会に出る」のが数年遅れようと何の問題もない。その証拠に、業績の悪い大手企業を見てみればよい。リストラする企業がありますな。逆に言えば、社会に出たって、会社の都合で「あんたの給料はもう払えまへん」と言われたらそれまで。人生で何度も転職を繰り返すアメリカや中国に行ってみなはれ。え?あの人もう辞めちゃったの?という事例など山ほどある。それで企業や社会が回らないか。アメリカは世界一、中国は世界二位の経済大国である。
ビール片手に清水エスパルスの成績を毎年のように心配するおじさんが学生に言えることは、せいぜい、「社会に出る必要なんてない。この世に生を受けた瞬間から、社会には出ているのだから。それより、君のような前途有望な若者が、いち早くデビューしてくれることを待っているよ」ということくらいか。
清水エスパルスは先週、実に8か月ぶりにホームで勝ち星を飾った。

 

 

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