中村祐人インタビュー2016夏 4/5
第3章
—中村選手はキャプテンとして黄大仙を率いました。シーズン通して主将として戦ってみて、得たことや学んだことはありますか?
中村「キャプテンの難しさを感じましたね」
—どのような点でですか?
中村「チームをまとめていくことですね。僕は元々、言葉よりも自身の姿勢で示すタイプなんですが、それだけに試合中で自分らしいパフォーマンスができなかったりとか。例えば、僕のよさはピッチの中でも飄々としているところだったりするんですが、周りを鼓舞しなければならなかったりだとか。本当に、難しさを感じましたね」
—そうだったんですね
中村「というのも、最終節でキャプテンマークをはずしたときに、すごく気が楽になったんですね。自分のプレーに集中することができたんです」
—やはり、目には見えない「キャプテン」としての重圧があったということなのでしょうか?
中村「そうですね。特に黄大仙は小さなクラブだし、若い選手も多い。自分がやらなければ、という気負いが多かったですからね。そういう気負いを心のどこかで感じていて、それに勝てなかったんでしょうね」
—もしも、将来的にキャプテンをやる機会が再び訪れたとして、キャプテンを「やりたい or やりたくない」でいえば、どちらですか?
中村「やりたくないですね」
—そうですか。それはやはり、今言ったような理由でですか?
中村「それもそうですけど、本来、キャプテンをやるようなタイプではないんですよ。誰か他にやるべき人がいて、その人がやればいいと思いますね」
—確かに、誰しもがキャプテンをできなければだめということもなく、キャプテンをやるにも適正があるでしょうからね
中村「そうなんです。適正があって、僕は自分にはその適正はないと思いましたし、こだわりもないですね」
—中村さんが思うキャプテンの適正とは何でしょう?
中村「言葉で示せるとか、みんなを鼓舞することができるとか。僕自身の場合は、自分自身のことを考えてプレーしていたほうが、チームのために貢献できる気がしますね」
—キャプテンとしての中村さんのシーズン中の振る舞いについて、もっとお聞きしたいのですが、いわゆる首脳陣と選手の橋渡し役のような役割もシーズン通してやってこられたのでしょうか?
中村「やってきましたね。最終戦の元朗戦のハーフタイムじゃないですけど、時折、自分が割って入ってみんなをポジティブな方向に向かわしめたりとか」
—なるほど。最終節だけの話ではなかったんですね
中村「コーチとはしっかりコミュニケーションは取ってきました。それこそ、練習中に呼ばれて、次の試合はお前をこのポジションで使いたいと思っているとか、若手のこの選手を試してみたいけど、どう思う?とか、相談されたりして。でもそれを見て、他の選手が『キャプテンはそっち派かよ』って考えちゃったりとか、そういうようなこともあったんですけどね」
—シーズンを通して、そのコーチと選手の間は関係があまりよくなかったんですね
中村「そうですね。だから、振り返ってみれば、最後までそこをきちんと修復できなかった、と言えるかもしれません」
—ただ、それはキャプテンだけの責任ではないように思えますが…
中村「まぁそれでも、彼(コーチ)と選手たちをうまく結び付けられなかった、という部分はあると思っています」
—ともあれ、黄大仙は降格が決まってしまいました。わずか1シーズンだけだったとはいえ、やはりこのクラブに情が移っている部分はあるのではないですか?(中村選手は来季はこのチームを離れることが決まっている)
中村「もちろんそうです。いいクラブでしたし、若い選手も多い。また、若い選手たちが僕をリスペクトしてくれているのも伝わってきますしね。降格してしまったけど、今後ももちろん、注視していきたいと思っています」
—本日はどうも、ありがとうございました!
※当ブログでは、中国1部リーグの呼称を中国で一般的に使われている「中超」に統一いたします。「中超」は中国語の「中国超級」(中国スーパーリーグ)の略で、日本でいうJ1に相当します。また、香港プレミアリーグについては「香港プレミアリーグ」と記します。