【公式】松本忠之「中国人は反日なのか」(コモンズ出版)著者のブログ

中国が発信している情報を偏見なく紹介します。その他、趣味のサッカー(ガンバ大阪/清水エスパルス/バルセロナ)やお酒の話題など。

広州富力から見たレナト獲得のメリット

※当ブログでは、中国1部リーグの呼称を中国で一般的に使われている「中超」に統一いたします。「中超」は中国語の「中国超級聯賽」(中国スーパーリーグ)の略で、日本でいうJ1に相当します。

また、香港プレミアリーグについては「香港超級聯賽」と記します。

広州富力がJの川崎フロンターレからブラジル人ストライカーのレナトを獲得した。電撃獲得に日本のメディアでも紹介されている。中国メディアでもこれを予測していたメディアはほぼ皆無だった。

レナトは現在26歳。2012年に期限付き移籍で川崎に加入し、翌年完全移籍。今季は17試合に出場し、9ゴールを記録。川崎の主力としてチームに貢献してきた。メディカルチェックのため広州へ行ったレナトを欠いて臨んだ鳥栖戦で川崎はホームで引き分け。試合後、レナト不在について聞かれた中村憲はその影響を否定はしなかった。

さて。レナトを獲得した広州富力だが、中国メディアではそれほど、というか驚くほど報道は少ない。それもそのはずで、パウリーニョグジョンセン、デンバ バ、アサモア ギャンなど、世界的なビッグネームが獲得報道だけでなく、来中したり、スタジアムに観戦にきたり、試合に出場したりと、大忙しだからだ。その上国内組でも中国代表クラスの国内移籍、孫可や張池明などもあり、そちらが優先的に報道されている。

では、広州富力から見たレナト獲得はどうだろう。評価については実際にプレーしてみないことにはわからないが、まずはやはり「日本でプレー経験あり」は大きいだろう。文化や環境は違っても、そこはやはり同じ東アジア圏。昨日ブラジルから広州に到着しました、というのとは環境への適応度でアドバンテージがある。

また、個人的にはこの獲得には広州恒大との情報交換もあったのでは?と感じる。お互い広州のチームで、両者の試合は広州ダービーと呼ばれライバル関係だが、一方ではよき理解者でもある。以前、ACLを戦う広州恒大がスケジュール上楽になるように、広州富力が異例の「広州ダービー日程変更」を行ったことがあった。中国サッカー協会に申し出て、週末のリーグ戦を延期。翌週ACLを控えていた広州恒大にスケジュール的(体力的)アドバンテージを与えたというわけだ。もちろんこれを広州富力が善意で自らやるわけがない(一度組んだ予定をすべて変更するコストは少なくない)。つまりは、広州恒大が持ちかけて、両者相談のうえ、広州富力が協力したのだ。

このように、ライバルでありながら同時にいい協力関係のある両者。広州恒大が補強をイタリア路線からブラジル路線に切り替え、世界中のブラジル人選手の情報を集めていた恒大が自分は獲得しなかったものの、いい選手がいるよ、と富力に進言した可能性はゼロではない。富力にとっては、かのスコラーリ監督の情報網で調べたブラジル人選手情報だ。自分たちのそれとは大いに差異があり、参考になる。

もちろん、上記は想像の域を出ない。だがレナト獲得が大きな 戦力化なのは間違いない。適応度のアドバンテージを生かして、レナトにはさっそくゴールを量産して活躍してほしい。