【公式】松本忠之「中国人は反日なのか」(コモンズ出版)著者のブログ

中国が発信している情報を偏見なく紹介します。その他、趣味のサッカー(ガンバ大阪/清水エスパルス/バルセロナ)やお酒の話題など。

【中村祐人】独占インタビュー(2015春) 第3章ゴール

4月の特別企画として、毎週の土曜日と日曜日に新連載を配信いたします。

タイトルは「【中村祐人】独占インタビュー(2015春)」。

香港プレミアリーグの名門・サウスチャイナで活躍する日本人選手の独占インタビューをお届けいたします。

聞き手は中国サッカーに造詣の深い当ブログ執筆者の松本忠之氏。

本日は第三章をお届けいたします。ぜひとも最後までお楽しみください!

—今、ちょうど「目の前にボールが来る」というお話がありましたのでお伺いしたいのですが、先日、リーグ杯の準決勝ペガサス戦で後半ロスタイム、中村選手が見事に逆転ゴールを決めてチームを決勝に導きました。この試合とゴールについて、私はとても感動して、記事も書かせていただいたのですが、あのゴールを振り返っていただけますか?

中村「あのゴールに関しては、狙ってあそこにいたわけではないんです。ただ、7番の彼が(チームメイトの陳肇麒選手のこと)パスを受けた瞬間に、彼は周りも見えていて、パスも出せるから、自分はパスをもらえる準備をしたんです」

—なるほど。

中村「でも、彼は(シュートを)打つだろうな、と。彼がボールを受けた瞬間に思いました」

—で、実際、陳選手はシュートを打ちました。

中村「はい。それもいいシュートだったので、入れ!と思いました」

—しかし、シュートはポストに弾かれました。

中村「で、僕の目の前に来た」

—その瞬間の心境は!?

中村「うわっ!来た!と」

—( 笑 )

中村「ふかすぞ、これ絶対ふかすぞ、と」

—( 笑 )

中村「まぁそう思いながら蹴ったら、入りました」

—本当ですか?( 笑 )

中村「いや、僕はいつもそうですよ」

—私が勝手にあのゴールを解説させていただきますと、もう後半ロスタイムでスコアは1-1。サウスチャイナのカウンター。まず右からボールを運びます。そして敵陣まで運んでから中央へ。さらにそこから左へ展開し、7番の陳選手がボールを受けます。相手の最終ラインにはDFが3枚いました。私が注目したのは、そこでの中村選手の動きです。

中村「はい」

—陳選手がシュートを打つまでの間、中村選手はずっとゴールに背を向けたままです。そして、陳選手がシュートモーションに入った瞬間、中村選手がバックステップですっと相手DFラインの裏に抜けだす。そして、ポストの跳ね返りに反応した時には完全にフリーの状態になっている。FWにとってフリーの状態を作り出す動きは非常に重要です。このプレーに私はとても興奮して、思わず知り合いに動画を見せながら解説してしまったくらいです( 笑 )。

中村「あぁ。そういう視点なんですね」

—本当に素晴らしい動き出しだな、と。

中村「あの場面で、一番ダメなのは自分がオフサイドになることなんですね。だから、動き出しに関しては、彼(陳選手)がボールを受けた瞬間は、まだ動かずに待っていたんです。でも、彼のところにボールが渡れば、DFがチェックに行くな、というのはわかっていたので、その時に動けば自分は裏に抜け出せるな、と」

—なるほど。では、プレーとしては、陳選手が打ってもいいし、パスを出してもいい、という状況を作り出していたんですね。

中村「もちろん、僕としてはパスを出してほしかったですよ。出してほしかったし、それに試合終了間際のあの状況で彼がシュートを打てるか?というのもありました」

—というのは?

中村「彼は連戦に次ぐ連戦だったんですよ。あの試合の時点で、7日間で3試合目だったんです。それに試合だけじゃなく、アウェイへの長距離移動もあって、かなり疲労はあったはず。だから、あの場面ではシュートは打たずに、パスを出してもいいのでは?と思っていました」

—しかし、シュートを打った。

中村「それも、すごいいいシュートでしたね」

—でも、そのこぼれ球を見事に決めた中村選手のあのシュートはやはり素晴らしかったですね。

中村「僕としては、なにもあのシーンだけではなく、常に狙っているパターンではあるんです。特にあの日は何度かチャンスが来てたけど、アンラッキーなものも含めて決めきれていなかった。でも、自分のなかでは、今日はゴールを決められるな、という感覚はあったんです」

—そうだったんですね。それにしても、あの決勝ゴールの場面は本当に冷静でしたね。映像で振り返っても、すごく冷静で、しっかりミートしている。しかも、利き足ではない左足でのシュートでした。

中村「まぁ映像で振り返ると、確かにそうですね。試合中はプレーに集中してますから、もちろん自分ではわかりませんけど」

(ここで、同席していた中村選手の奥様が補足説明をしてくれる)

夫人「あの試合、もし延長に入ってしまったら、サウスチャイナとしては圧倒的に不利になってしまっていたんです」

—といいますと?

夫人「サウスチャイナの一人の選手が試合中に肉離れを起こしていたんです」

—そうだったんですね。

(以下、中村選手に戻る)

中村「だから延長に入っていたら、10対11で戦わざるをえなかったんです。その上、先ほども言いましたが、過密日程の上にアウェイへの移動もあった。だから、延長に入ってしまったらきついな、というのは頭の中にありましたね」

—その追い込まれた状況の中で、試合終了間際、千載一遇のチャンスが巡ってきた。自分の目の前にボールが来た。その時に中村選手が思ったのは…

中村「こりゃふかすな」

—未だに信じられませんよ、それ( 笑 )。

中村「いや、でも自分はいつもそうなんですよ。チャンスボールが巡ってきた時に、『あぁこれミスるな、ミスるな・・・』と思いながら打つ。でも、なぜか入っちゃうんです」

—通常、ストライカーには、いくつものゴールパターンのイメージがあって、試合中にそのイメージ通りのシュチュエーションが来ると、「これだ!」ってむしろポジティブにメンタルが動くと思うのですが、中村選手の場合、「ふかすな」「ミスするな」とマイナスに動く。でも、しっかり決めることができる。これは一体どう説明すればいいんですかね?

中村「先日、福田さん(※福田健二選手。香港プレミアリーグYFCMD所属)と食事した時に言われたのは、試合後にチャンスシーンで『ふかすな』とか『ミスるな』と思っていたことを振り返れる時点で冷静なんだ、と」

—あぁ。なるほど!

中村「試合後、ゴールシーンでどんなことを思っていたかを振り返れる時点で、お前は冷静なんだよって」

—その通りですね。

中村「自分ではよくわからないですけど。まぁ福田さんがそう言うんだから、そうなのかな、と( 笑 )」

—でも、これはもうユースの時代なんかも含めて、過去からの経験の賜物なのではないですかね?やっぱり若い選手ほどチャンスシーンは慌てて、はずしてしまうことが多いですし。

中村「ただ、僕はFWでもシュート数はそんなに多くないんです。でも、少ないシュート数でも確実に決めてきたという自分の歴史があるので、もしかしたらそういうのが影響しているのかもしれませんね」

続く