なぜ香川は出場機会を与えられなかったのか?
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出場機会があるだろうと明言されながら、出場できなかった…
マンチェスターUの香川だ。
ユナイテッドはファーストレグを敵地で02で落としており、この試合では3点差をつけて勝つ必要があった。しかも、アウェイゴールというルールがあるため、1点でも取られると窮地に陥る。そこで、失点はなんとしても0に抑えて、最少得点である3点を奪う、つまり30で勝つことを目指した。試合前、モイーズ監督もこの数字を選手たちに示したという。
そして。
試合はまさに30でユナイテッドの勝利。大逆転で見事にBEST8進出を果たした。
だが、日本のファンは素直に喜べない。
そう。香川が出場しなかったからだ。
これまで、リーグ戦では出場機会がほとんどなかったものの、CLでは出場を果たしてきた。しかも、試合前には監督の起用宣言まで飛び出した。だからこそ、必ず後半に出てくるものと思っていたのだが…
この試合を、交代選手を中心に見てみよう。
まず、試合をなんとしても30で終えたかったというユナイテッドのモイーズ監督の思惑が最初にある。そして、52分。ペルシーのハットトリックとなる3点目が入り、この時点で30というスコアが成立した。
さぁ。
ここからは、攻めの姿勢を貫くことは大事だが、あまりリスクを犯さずに、失点を防ぐことをまず考える必要が出てくる。ただでさえ、前半にもGKデ・ヘアの攻守に助けられたのだから。
だが、モイーズ監督はすぐには動かなかった。
それもそのはず。後半開始早々の時点でスコアは30なのだ。ピンチはあったものの、うまく試合を展開してきた。下手に動かせない。選手交代を打つ手が遅くなるのも理解できる。
そして、初めて動いたときには、試合はすでに77分になっていた。
ここでモイーズ監督はバレンシアに代えてヤングを投入した。香川の出番があるとしたら、バレンシアとの交代であるこのタイミングかと思いきや、ヤングを選択した。
次の選手交代は82分。フレッチャー。これはもちろん守備を意識しての交代。そして、この時点で香川の出番はなくなった。というか、あったとしても、プレー時間が短すぎて、なかったも同然の状態となった。
最後の交代枠は試合終了間際。負傷したペルシーに代えてフェライニを投入。こうしてユナイテッドは見事に30の勝利を手にし、香川は出場機会を与えられなかった。
試合展開。
そして、守備。
このふたつがその理由だろう。
30で勝たなければならない試合で、後半開始早々でまさのそのスコアになり、試合が進むにつれて、そのまま試合を終わらせることを意識しはじめる。そうなると、攻撃的だが守備に不安がある選手、もしくはドリブルやパスが得意でもフィジカルが強くない選手よりも、安定した守備をもたらしてくれる選手を起用したくなるのが指揮官の心理だろう。
GKのファインセーブという要素があったものの、ユナイテッドはなんとかアウェイゴールを許さずに勝ちきった。勝ちきったのだから、選手交代がどうであれ、一応、指揮官は結果を出した。その意味では、評価されてしかるべきである。
だがしかし…
香川の出番はやはり遠い。
CLのBEST8での出場に期待して…
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筆:小松英之 ツイッターはこちら
小松英之(こまつひでゆき)
サッカーコラムニスト。
サッカー専門ブログ「BEE Football Spirit」アドバイザー、コラムニスト。
【略歴】
静岡生まれ。
小さい頃から地元の高校である清水商業(当時)や清水東、東海第一(当時)、静岡学園などの試合を見て育つ。Jでは清水サポ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。
【観戦経験】
英プレミア:マンU(香川在籍時)、チェルシー、マンチェスターC。
リーガ:バルセロナ
セリエ:ユベントス、ローマ。
ブンデス:ニュルンベルク(長谷部、清武在籍時)、ハンブルガーSV
【中国Cリーグ】
中国サッカーへの造詣が深く、山東魯能をはじめ上海申花や武漢卓アルといったクラブ関係者と交流があり、Jリーグのアジア枠設置に伴い、中国人選手がJリーグへ移籍する際の窓口の一つにもなっている。また、元中国サッカー協会会長の閻世鐸氏とは何度も会食している。
08年 山東魯能のCリーグ優勝祝賀パーティーに日本人として初めて正式招待。
09年 アジアチャンピオンズリーグ 山東魯能日本人アドバイザー。
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