ミスした吉田は批判されるべきなのか?(2/2)
(小松英之が音声で振り返るイタリア戦はこちらから)
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ネット上のコメントを見ていると、真のサッカーファンはやはり厳しい視線を選手に向けている(一部の悪質な非難中傷は論外)。
これだ。大事なのはこれだろう。
ミスをしたときに、その人のミスに対して、厳しい視線を向けるべきだろうか?これにはいろいろな状況があると思う。今回の日本代表の場合、敗戦を喫した選手たちはプロだ。プロでも人間だからミスはする。では、プロ選手のミスに対して、厳しい目線を向けるべきか?なぜなら彼らは自分がミスを起こしたことを十分に自覚しているからである。なんなら、サッカーのプロである彼ら、もしくはピッチにいた彼らのほうが、サッカーについてもその時の状況についても、詳しいのだ。それでも厳しい目線を向けるべきだろうか?
私の答えは「Yes」だ。
プロとはそういうものだ。
ましてやその人たちが「選ばれし者」であり、「社会的影響力を持つ者」であるなら、なおさら「Yes」だ。
そして、サッカー先進国がなぜ強くなっていったかを振り返れば、そこにはやはり、容赦ない「厳しい目線」がある。セルジオ越後さんやラモスさんなどは、よく言うではないか。ブラジルでは、ミスを犯して、しかもそれが原因で敗戦となったら、みな、どうするか。それはなにも、集団リンチなどではない。それだけ「セレソン」が国民的存在だからだ。国民が感情移入できて、誇りを持てて、熱中できて、日常を忘れさせてくれて、生きがいすらもたらしてくれる存在だからだ。
日本代表がW杯出場を決めたオーストラリア戦は、視聴率が今年最高だったという(6月4日時点での記録)。渋谷での大騒ぎはもはや恒例行事化している(その是非はともかくとして)。これほどまでに影響力が大きい舞台で、選ばれし者だけがそこに立てる。もちろん、本人たちの才能と努力と経験と実績があるからだが、ここまでの存在となると、もはや公人であり、文字通り「日本の代表」である。そしてサッカーにおいてはプロ選手である。ならば、「ミスした本人が一番よくわかっているから」などというのは生易しい。厳しい目線にさらされて然るべきなのである。
こうやって厳しくも温かい視線を注ぎ続けるファンがいることで、日本サッカーは成長する。こういう悔しい試合(ブラジル戦も含む)を経験することで、W杯優勝に一歩ずつ近づいていく。
いいプレーをした選手には惜しみない賞賛を。
よくないプレーをしてしまった選手には、(温かくも)厳しい目線を。
それが大事だ。
(筆:小松英之)
小松英之(こまつひでゆき)
サッカーコラムニスト。
サッカー専門ブログ「BEE Football Spirit」アドバイザー、コラムニスト。
【略歴】
静岡生まれ。
小さい頃から地元の高校である清水商業(当時)や清水東、東海第一(当時)、静岡学園などの試合を見て育つ。Jでは清水サポ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。
【観戦経験】
英プレミア:マンU(香川移籍後)、チェルシー、マンチェスターC。
リーガ:バルセロナ
セリエ:ユベントス、ローマ。
【中国Cリーグ】
中国サッカーへの造詣が深く、山東魯能をはじめ上海申花や武漢卓アルといったクラブ関係者と交流があり、Jリーグのアジア枠設置に伴い、中国人選手がJリーグへ移籍する際の窓口の一つにもなっている。また、元中国サッカー協会会長の閻世鋒氏とは何度も会食している。
08年 山東魯能のCリーグ優勝祝賀パーティーに日本人として初めて正式招待。
09年 アジアチャンピオンズリーグ 山東魯能日本人アドバイザー。
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