【公式】松本忠之「中国人は反日なのか」(コモンズ出版)著者のブログ

中国が発信している情報を偏見なく紹介します。その他、趣味のサッカー(ガンバ大阪/清水エスパルス/バルセロナ)やお酒の話題など。

槙野に見るJクラブのACLの戦い方

イングランド・オランダ・日本・中国の各国の指導者ライセンスを所持するサッカースクール!

小松英之の連載がブログで紹介されました!

浦和サポーターが日本どころか、世界にも名だたる熱心なサポーターたちであることは、清水サポーターの私でもよく知っている。故に、中国目線から筆をとることに、少しばかり躊躇してしまうが、それでも試合を見たままの感想を、中国サッカーを日ごろから追いかけている者の目線からつづってみたいと思う。

ACL2013がいよいよ開幕。26日の試合では、中国チャンピオンの広州恒大がホームで浦和を迎え撃った。結果はご存知のように30で広州が勝利した。しかも、広州は64分にバリオスを、81分にコンカを下げるというリッピの余裕の采配すら見せた。

今年のJの大目標のひとつはACL制覇、そしてモロッコで開かれるクラブW杯での好成績だ。これはいろんなところで披歴されている。個人的に、今年のACL制覇に一番近いJクラブは浦和であると私は思っている。それは戦力的にそうだが、経験が占める割合が大きい。ACLでは、経験がものをいう。

なぜか。

サッカーの質が違うからである。この日の浦和と広州の試合でも、浦和はクラブのみならず、サポーターもそれを見せつけられたはずだ。日本ではありえないような、ラフプレーの数々。しかも、そこにアウェイの笛が加わるのだから、アジアを制覇するのがいかにタフかというのが計り知れるというものだ。

広州との試合、浦和の選手はやはりアウェイの笛と広州のラフプレーに苛立っていた。特に後半は、浦和の左サイド(広州の右サイド)の攻防でそれがありありと見えた。

象徴的なシーンは80分。

宇賀神選手がイエローをもらったシーンだ。これは、明らかに要らないイエローだ。そして、普段の宇賀神選手なら、あんなプレーはしないのではないか(普段から浦和の試合をチェックしてないので推測しかできないが)。あからさまに、倒れ込んだ広州のファン・ボーウェンの手を蹴りあげていた。その前に、ファンが明らかなイエローとなるファウルを犯していただけに、お互いがラフプレーをお見舞いする一場面となってしまった。

もちろん、試合全体を通して、広州のラフプレーは目立った。それは、ホームなのに広州が3枚のイエローをもらっていることからも明らかだ。だが、1勝という結果に変わりはない。これが「結果は負けたが、フェアプレーという観点なら浦和が完全に勝利していた」というような解釈ができるのなら問題はない。しかし、勝負の世界では、残念ながら、そんな解釈は、なぐさめでしかない。

では、こういうラフプレーもまかり通る相手に対して、どう対処していくか。これは相手が中国チームに限ったことではない。韓国勢も、中東勢もやってくる。

広州との試合で、私はその活路を槙野選手に見た。

宇賀神選手がイエローを受ける少し前のプレーだが、広州がカウンターを仕掛けたとき、槙野選手が後ろから詰めてチャン・リンペンを倒してファールを受けた。チャンはこの日、浦和選手を苛立たせるラフプレーを仕掛けた張本人ともいえる選手。槙野は、相手が倒れて笛が吹かれると、両手をあげて、チャンに向かって「これのどこがファウルなんだ?」と言わんばかりにジェスチャーした。槙野選手が審判にではなく、チャンに向かってこのジェスチャーをしたことが重要だ。対するチャンも、槙野に向かって両手を挙げ、「どう見たってファウルだろう!」とジェスチャーエスカレートするかに見えた。

しかし、次の瞬間。槙野選手は右手を差し出した。

このシーンを見たとき、「さすが槙野」と思った。

そう。どんどんやればいいのだ。先ほども言ったように、勝負の世界。どれだけこちらがフェアプレーをしたところで、得点が加算されるわけでもない。ならば、相手がラフプレーをしてくるなら、こちらもどんどんやればいい。

ただし、やり方ってものがある。残念ながら、宇賀神選手はその一線を越えてしまった。ラインぎりぎりのところでやらなければいけない。しかも、やった後に、槙野選手のように、手を差し出せばいいのだ。これだけで、実は、ラフプレーがエスカレートしていく負のスパイラルを避けられる。敵の選手が、倒れている自分に手を出してくる。そしてその手を握ると、自分を起こしてくれる。肩をポンポンとたたき合う。これだけで、一旦、クールダウンできる。

そして、プレーが再開されたら、またそのラインぎりぎりで相手を倒せばいいのである。

クリーンに戦うように、日本国内で鍛えられているJクラブの戦い方は実に美しい。その美しいサッカーを貫いて勝てるのなら、わざわざラフプレーをしにいく必要などもちろんない。

しかし、それで勝てないなら、戦い方を考えるべきだ。ラフプレーの度合いを増したからといって、勝てるというわけではんもちろんない。だが、相手にラフプレーされっぱなしで、フラストレーションがたまり、普段のようなプレーができなくなって負けてしまうようだと、相手の思う壺なのだ。

世界の名将、リッピ監督も、試合後の会見で、「うちは勝ったには勝ったけど、ラフプレーが多かったので反省してます」などというはずがない。結果がすべての厳しい世界で指揮を取り続けてきた監督だからこそ、観念だけでは勝負に勝てないことを肌で理解しているのだろう。

浦和はホームでは、ぜひ、広州を相手に大勝してほしい。

そして、浦和と広州が決勝トーナメントにあがってほしい。

<筆:小松英之>

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