【レポート連載】海を越えたピッチからの便り001
笛が鳴る。
「休憩!休憩していいよ」
コーチの声が飛ぶ。しかし、小さな選手たちは身動きひとつしない。
「どうした?休憩だ。水飲みに行っていいぞ」
コーチがさらに促す。子供たちは動かない。緊張感が広がる。それもそうだ。休憩はついさっき取ったばかり。敏感な子供たちが気付かないはずがない。
二人一組になり、インサイドキックで対面の相手にパスを出す。最も基本的な練習だ。コーチはボールを足元に置くと、なぜ休憩を指示したのか説明しはじめる。
「いい加減な気持ちでやってると…」
パスを出す。ボールはよろよろと勢いなく転がる。
「いい加減なパスしかできない」
もう一度繰り返す。生気のないパスが転がる。
子供たちは理解する。テクニックを指摘されたのではない。コーチは今やっている練習の態度のことを言っているのだ。そして、コーチは最後にこう付け加えた。
「試合で負けて後悔するのは自分たちだよ」
続
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筆者紹介:小松英之(こまつひでゆき)
サッカーコラムニスト。中国語教師。龍飛中国語会話スクール名誉講師。サッカー専門サイト「BEE Football Spirit」アドバイザー、コラムニスト。
静岡生まれ。
小さい頃から地元の高校である清水商業や清水東、東海第一(当時)、静岡学園などの試合を見て育つ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。その他チェルシー、マンチェスターC、ユベントスなどの観戦経験あり。
中国サッカーへの造詣が深く、山東魯能をはじめ上海シンハや武漢光谷といったクラブ関係者と交流があり、Jリーグのアジア枠設置に伴い、中国人選手がJリーグへ移籍する際の窓口の一つにもなっている。
08年 Cリーグ武漢光谷のスポンサー募集窓口担当。
08年 山東魯能のCリーグ優勝祝賀パーティーに日本人として初めて正式招待。
09年 アジアチャンピオンズリーグ 山東魯能日本人アドバイザー。
山東魯能でコーチを務める張海濤コーチとは家にも行ったことがあるほどの仲。張コーチは08年、ドイツのケルンFCにてコーチ留学を終えて帰国した。ドイツでのコーチ留学の状況を聞けるなど、貴重な交流を重ねている。