日本02韓国「ハードルが下がってよかった」
昨日行われたW杯前最後のホームでの壮行試合。日本は韓国を招いて戦ったが、結果は02で敗れた。2月の東アジア大会でも完敗を喫したが、今回はW杯前、しかも日本もベストメンバーで臨んでいる点においてその意味合いは大きく異なる。
この敗戦をどう捉えるべきなのだろうか。
まずメンバーについて、日本はレギュラーのトゥーリオや内田をはじめ、松井や稲本、玉田は調整のため出場しなかった。韓国のエース、パク・チソンも試合後のコメントで「今日の日本は(負傷で)3人いなかった。3人が戻ればレベルも戻ると思う」と語っている。
だが、これを真に受けていたら大きな問題だ。
メンバーはすでに決まっている。つまり、誰が出ていようと出ていまいと、選出されたメンバーがベストメンバーなのだ。W杯本番までに俊輔や本田が絶対に怪我をしないなどという保証はどこにもない。つまり、23人+予備登録メンバーを日本のベストメンバーと考えなければならない。
戦術やコンディションについては何も言うまい。ここまできて周りがどうこういって変わるものでもない。こればかりはプロの監督、コーチ、選手、トレーナー、ドクター、そしてスタッフで構成された「日本代表」を信じるしかない。
あえてこの試合での光明を見出すとしたら、それは周囲の期待が薄れていくことか。
前回のドイツ大会は、日本代表史上最強などと呼ばれ、中田英という絶対的な存在を軸に個人のレベルでは本当に世界と対等に渡り合えるのでは?という期待感にあふれていた。さらにドイツに入ってからの親善試合のドイツ戦で、なんとあのドイツから2ゴール奪うという調子よさぶりを見せたために、より期待感は高まった。
その期待感はグループリーグ第1戦、オーストラリア戦で先制し、試合終了間際まで続いた。その後まさかの3失点というシナリオが待っていたとは誰も予想できなかったくらいに、熱狂と期待がジーコジャパンを渦巻いていた。
それに比べると今回の岡田ジャパンは、正直言って「期待薄」である。それが昨日の韓国戦での完敗でより下がった。W杯本番前にまだあと2試合の壮行試合を備えているが、逆に2つとも負けたほうがいいのではないか。国民の期待は下がり、TVの視聴率や盛り上がりは下がるかもしれない。
しかし、本番で勝てばいいのである。
期待感が高まることを最近ではよく「ハードルが上がる」という。今の日本代表は本番前のハードルは低ければ低いほどいい。なぜなら、挑戦者だからだ。グループリーグ内では実力も評価も最下位。これが世界の常識だ。しかし、それでいいのである。オシムが語ったように、日本は経済では世界トップクラスだが、その基準をそのままサッカーに当てはめてはいけない。しかしドイツ大会では期待感の高まりによって、日本全体が間違ったものさしで代表を測っていた。
期待感が薄く、ハードルも低く、代表を測るものさしも正常なもの。そうなってはじめて日本は完全に自分らしさを発揮できる。過度な期待はいらない。
どんなに今ふがいない試合をして、コンディションが悪くても、初戦のカメルーン戦で勝利すればすべてが変わる。みんなついてくる。
だからあえて言おう。昨日は負けてよかったのだ、と。
いや、もしかしたら岡田監督の深遠なる作戦で、実は「わざと」韓国に完敗したのかも…
まぁそれはないか。
presented by BEE Football Spirit
筆者紹介:小松英之(こまつひでゆき)
サッカーコラムニスト。中国語教師。龍飛中国語会話スクール名誉講師。サッカー専門サイト「BEE Football Spirit」アドバイザー、コラムニスト。
静岡生まれ。
小さい頃から地元の高校である清水商業や清水東、東海第一(当時)、静岡学園などの試合を見て育つ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。その他チェルシー、マンチェスターC、ユベントスなどの観戦経験あり。
中国サッカーへの造詣が深く、山東魯能をはじめ上海シンハや武漢光谷といったクラブ関係者と交流があり、Jリーグのアジア枠設置に伴い、中国人選手がJリーグへ移籍する際の窓口の一つにもなっている。
08年 Cリーグ武漢光谷のスポンサー募集窓口担当。
08年 山東魯能のCリーグ優勝祝賀パーティーに日本人として初めて正式招待。
09年 アジアチャンピオンズリーグ 山東魯能日本人アドバイザー。
山東魯能でコーチを務める張海濤コーチとは家にも行ったことがあるほどの仲。張コーチは08年、ドイツのケルンFCにてコーチ留学を終えて帰国した。ドイツでのコーチ留学の状況を聞けるなど、貴重な交流を重ねている。