【公式】松本忠之「中国人は反日なのか」(コモンズ出版)著者のブログ

中国が発信している情報を偏見なく紹介します。その他、趣味のサッカー(ガンバ大阪/清水エスパルス/バルセロナ)やお酒の話題など。

派手なW杯報道にその目を奪われてはならない

12日ACLの決勝トーナメント1回戦が各地で行われたが、なんとJ三連覇を成し遂げた鹿島が、ホームで韓国の強豪浦項(ポハン)に01で敗れBEST16で姿を消した。これにより今回のACLでJの4チームは全滅。日本勢が8強に残れなかったのは4年ぶりだという。

ACLは日本国内ではまだまだ大きな注意を引くまでにはいたっていないように感じる。中国での報道の量や注目度は、日本以上だ。しかしチャンピオンズリーグというとどうしても欧州をイメージしてしまうし、また韓国や中国は地理的に近く、ソウルや北京、上海といった馴染みのある地域名を冠したチームならまだしも、その他の国・地域のチームは正直、名前を聞いてもピンと来ないし、どんなチームで何が強みでどんな注目選手がいるのかさっぱり。そんな状態では確かに興味を持てというほうが難しいのかもしれない。

そんなACLに近年注目が集まりだしたのは、ACLを制覇すれば、世界の強豪クラブと戦えるようになったから。つまり、世界クラブW杯である。この大会には欧州、南米はじめ各大陸の王者が集う。つまり、ACLのチャンピオンは欧州CLの覇者と対戦できるのである。これはチームにとっても選手にとっても大きな財産となる。

たとえば今回の欧州CL決勝はインテルvsバイエルン。どちらが優勝するにしても、このような強豪クラブと本気の戦いができるチャンスなどまずない。そういう意味でも、ACLは「世界への挑戦状をつかむ大会」としてその価値をあげてきている。(もちろん、ACLの優勝賞金がアップしたことも関係しているが)

アジアはACLを欧州CLのように高めていかなくてはならない。欧州では、自国リーグと欧州CLの2冠が最も大事なタイトルとされる。国内カップ戦を入れて3冠とする見方もあるが、やはりリーグとCLは格別だ。選手のなかには「リーグ戦より欧州CL」と言い放つ者もある。

CLの価値、それはなにより「各国の強豪だけが集まっている」という点だ。だからこそ欧州では無名の選手は「CLに出場できるクラブかどうか」を移籍時のひとつの判断基準にする。なぜなら、CLでプレーできるという栄誉だけに留まらず、CLでの好プレーは選手の知名度を飛躍的にアップさせるからだ。今季CSKAモスクワでプレーする本田はその典型だ。

ACLもそこまでの高みを目指していかなければならない。

アジアの無名選手が「ACLに出たくてこのクラブに来た」というような発言がきけるような大会に、だ。

ではJリーグはどうか。

僕は、今回の「JクラブひとつもBEST8に上がれず」をもっと悔しがらなくてはならないと思う。W杯の陰に隠れてしまった感はあるが、それを抜きにしてもやはりまだまだ悔しさが足りない。もっと報道していい。いや、もっとJクラブのふがいなさを怒ったり、批判するようなメディアや評論家が出てもいいのではないか。

Jが育たなければ、日本代表は強くならない。それは必然の理だ。日本はブラジルやアルゼンチンではない。欧州の主要クラブで活躍する選手でさえ代表に入れないことがあるような強豪国ではないし、それだけの数の選手を欧州に送り出しているわけでもない。だからこそ、Jリーグが大事なのだ。

そのJをもう一歩、成長させるためにACLは持ってこいの大会である。もっと盛り上げなくてはいけない。もっと注目しなければいけない。「リーグ優勝とACLの2冠」というフレーズがもっと普通に巷にあふれ、それが普通の価値観となるくらいにまでしていかなくては。

派手なW杯報道の裏で、JクラブがアジアでBEST8に入れなかったという事実があることを、肝に銘じておかなければならない。

筆者紹介:小松英之(こまつひでゆき) 

サッカーコラムニスト。中国語教師。龍飛中国語会話スクール名誉講師。サッカー専門サイト「BEE Football Spirit」アドバイザー、コラムニスト。

静岡生まれ。

小さい頃から地元の高校である清水商業や清水東、東海第一(当時)、静岡学園などの試合を見て育つ。大学卒業後に中国に渡り、日本代表やJリーグの観戦ができなくなるが、あふれるサッカー熱は抑えきれず中国サッカーの観戦及び取材を行うようになる。その他チェルシーマンチェスターC、ユベントスなどの観戦経験あり。

中国サッカーへの造詣が深く、山東魯能をはじめ上海シンハや武漢光谷といったクラブ関係者と交流があり、Jリーグのアジア枠設置に伴い、中国人選手がJリーグへ移籍する際の窓口の一つにもなっている。

08年 Cリーグ武漢光谷のスポンサー募集窓口担当。

08年 山東魯能のCリーグ優勝祝賀パーティーに日本人として初めて正式招待。

09年 アジアチャンピオンズリーグ 山東魯能日本人アドバイザー。

山東魯能でコーチを務める張海濤コーチとは家にも行ったことがあるほどの仲。張コーチは08年、ドイツのケルンFCにてコーチ留学を終えて帰国した。ドイツでのコーチ留学の状況を聞けるなど、貴重な交流を重ねている。

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